Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 脳神経
パネルディスカッション 脳神経1脳梗塞におけるエコー検査の役割

(S417)

脳梗塞診療における下肢静脈エコー検査の役割

Ultrasound diagnosis of deep vein thrombosis of lower extremities in the stroke case

濱口 浩敏

Hirotoshi HAMAGUCHI

北播磨総合医療センター神経内科

Department of Neurology, KITA-HARIMA Medical Center

キーワード :

【はじめに】
血管エコーは全身血管を無侵襲に評価できる非常に有用な検査法である.脳卒中領域についても,かつては血管造影がgold standardであったが,現在ではより低侵襲,無侵襲な検査法であるCT,MRI,MRAに加えて,エコー検査が重要な役割を担っている.その際,頸動脈エコーだけを知っていればよいという訳ではなく,あらゆる血管エコーが脳卒中診療に関連する.今回,脳卒中領域,特に脳梗塞診療における下肢静脈エコーの役割と可能性について報告する.
1.脳梗塞の原因診断としての下肢静脈エコー:脳梗塞の原因として,心原性塞栓は重要な病型の一つである.これは,病歴や画像から心原性塞栓を疑い,経胸壁心エコーや経食道心エコーにより,心内血栓の確認,右左シャントの確認を行うことで判断する.この際,卵円孔開存や心房中隔欠損,心房中隔瘤などを認め,バルサルバ負荷にて右左シャントを確認した場合は,奇異性塞栓の可能性が考えられるため,塞栓源として下肢静脈エコーで深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:以下DVT)や肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:以下PTE)を観察する必要がある.
2.脳梗塞を契機にDVT/PTEを発症した場合の下肢静脈エコー:特に下肢麻痺のある脳卒中急性期患者では,入院時安静臥床を強いられるため,高率にDVTを引き起こす可能性がある.ここでも下肢静脈エコーでの評価が有効な手段といえる.通常の場合はiliac compressionが存在する左下肢にDVTが生じやすいとされるが,脳卒中例については,麻痺側にも起きやすい.脳梗塞例であれば,抗凝固療法を中心とした加療を行うことで対応できるが,出血性脳梗塞や脳出血例の場合は,抗凝固療法禁忌となりうるため,理学的予防法を選択する.ここで,下肢静脈エコーを頻回に用いることで,DVTの発症部位,進展の程度をフォローすることができ,リスク評価につながる.
3.脳梗塞患者で特に注意しないといけないDVT/PTE:脳梗塞患者においては,梗塞の範囲により意識障害や失語により意思疎通が困難な症例を多数経験する.このような患者の場合,DVTやPTEを発症していても気づくのが遅くなる可能性が存在する.特に急性期の場合は,呼吸状態(呼吸回数やSpO2)や下肢の状態(腫脹の程度や色調変化)をこまめに観察するように心がける.このとき,Dダイマー値の変化が役に立つ場合があるので,定期的にフォローするとよい.
4.SCUにおける下肢静脈エコーの将来像:stroke care unit:SCUにおいては,急性期からの脳梗塞患者に対して,濃厚な治療と早期からのリハビリテーションを行うことで死亡率の低下,在院期間の短縮,在宅退院率の増加,長期的なADLとQOLの改善を図ることができる.ここでも下肢静脈エコーが効力を発揮する.緊急入院した時点で,ベッドサイドで下肢静脈エコーをスクリーニング検査しておくことで,現時点でDVTが存在するのか,今後出現する可能性がどの程度あるのかを把握することができる.この際,医師のみならず,看護師にもある程度エコーの知識および技術を持っていてもらうことで,より早期DVTの発見に役立つと思われる.
【おわりに】
脳梗塞診療に下肢静脈エコーを駆使することは重要である.今回,自験例を提示しながら報告したい.