Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 脳神経
パネルディスカッション 脳神経1脳梗塞におけるエコー検査の役割

(S416)

急性期脳梗塞診療における経頭蓋超音波検査の役割

Clinical Utility of Transcranial Doppler for Acute Stroke

井口 保之

Yausuyuki IGUCHI

東京慈恵会医科大学神経内科

Neurology, Jikei Univeristy School of Medicine

キーワード :

急性期脳梗塞診療は,神経画像検査の技術革新によって,なかでもmagnetic resonance imagingの登場によって格段の進歩を遂げた.加えて,簡便かつ比較的安価で繰り返し実施可能な脳神経脈管超音波検査(経頭蓋超音波検査,頸部血管超音波検査,経食道心臓超音波検査,下肢脈管超音波検査等)の臨床応用が進み,急性期脳梗塞診療の質は著しく向上している.なかでも経頭蓋超音波検査は,血管病変評価,栓子検出,右左シャント疾患検出,治療への応用など幅広く活用されている.検査法の実査は,まず検者は被検者の頭足に位置し,両側の経側頭窓・経眼窩窓・経大後頭窓を良好に観察できる場所を確保する.経頭蓋的に頭蓋内血管の血流波形を検出するためには,あらかじめ超音波が頭蓋骨を透過しやすい部位で検査をおこなう.頭蓋内血管を検出する部位は経側頭骨窓,経眼窩窓,経大後頭孔窓である.経側頭窓は解剖学的に前大脳動脈,中大脳動脈,後大脳動脈などの観察が可能である.経眼窩窓からは内頸動脈サイフォン部,眼動脈が観察できる.椎骨動脈および脳底動脈は,経大後頭孔窓を用いて評価する.経頭蓋超音波検査は,経頭蓋カラーフローイメージと異なり血管走行を直視下で観察できないため,血管同定にはある程度の習熟が必要である.高齢・女性・アジア人は骨の超音波透過性が低く,超音波を用いた頭蓋内評価が困難な場合がある.急性期脳梗塞診療における経頭蓋超音波検査の診断・治療的役割は以下の通りである.①アテローム性血管病変・動脈解離による血管病変の診断は,主に血流速度と血流波形パターンの左右差から,狭窄・閉塞の有無を評価する.②急性期脳梗塞に認める閉塞血管の再開通現象は,Thrombolysis in Brain Ischemia(TIBI)Transcranial Doppler Flow Gradesを用いて評価する.③くも膜下出血術後攣縮は,絶対値および頸動脈血流速度と頭蓋内血管の血流速度比から評価する.④アテローム血管病変,心疾患に由来する頭蓋内を飛来する栓子はmicroembolic signals:MESとして描出可能,脳梗塞の機序(塞栓症)をリアルタイムかつ非侵襲的に評価する.⑤右左シャント疾患(卵円孔開存,肺動静脈瘻等)を比較的低侵襲に検出,右左シャント疾患が関与する脳梗塞の発症機序(奇異性脳塞栓症)を評価する.④超急性期脳梗塞に対しtPA静注+超音波照射併用療法を実施,高い再開通率と良好な転帰を目指す.本邦における脳卒中センターにおいて,MRI,血管内治療を視野に入れた脳血管造影検査,さらに脳神経脈管超音波検査を遅滞なく実施できる体制を構築することはきわめて重要である.今回のパネルデイスカッションでは経頭蓋超音波検査の急性期脳梗塞診療における有用性と今後の展望を中心に概説し,幅広く討論したい.