Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 腎泌尿器
パネルディスカッション 腎泌尿器1尿路結石の超音波診断をもう一度見直そう!

(S408)

指導超音波検査士の立場からの提言

Recommendations from the perspective of Registered Senior Medical Sonographer

関根 智紀

Tomoki SEKINE

国保旭中央病院中央検査科

Asahi General Hospital, Department of Laboratory

キーワード :

【はじめに】
尿路結石の超音波検査を検査技師(指導超音波検査士)の立場から,もう一度見直して,その利点について述べてみたい.
【尿路結石とは】
尿路結石は,尿路(腎・尿管・膀胱・尿道)にみられる結石である.尿管結石の疝痛発作時には,結石が尿管の生理的狭窄部である腎盂尿管移行部,総腸骨動脈交差部,尿管膀胱移行部の3ヵ所に陥頓して見られやすい.
【画像診断の診断能】
すでに4名の匠の先生から尿路結石の診断能を含めた多くの情報が述べられているので詳細は割愛させていただく.最近では,CT検査を用いて迅速に診療を進めていく医療機関が増加している.
単純X線写真:尿路結石の90%はX線陽性結石だが,あまり小さな結石は腸管ガスとの重なりにより検出が困難で,同定できるのは60%程度とも言われている.排出性尿路造影では結石と尿路の一致を確認するのに役立つ.
CT検査:単純ヘリカルCTでの診断能は高く,また結石の約10%を占めるX線陰性結石(尿酸結石など)にも有用である.閉塞性尿路結石の二次所見である,腎杯・腎盂・尿管の拡張,浮腫による腎周囲脂肪の濃度上昇,腎被膜下の溢流,腎腫大などが高率で得られる.
超音波検査:熟練した医師や技師が超音波検査により疝痛発作時の患者を検査した場合,結石の存在する位置にもよるが診断感度は90%以上とも報告されている.
【指導超音波検査士の立場から】
日超医には一昨年から腹部領域の超音波検査に指導と教育を主体とした指導超音波検査士が設けられている.その立場で,今回のテーマである「尿路結石の超音波診断をもう一度見直そう」を広義から述べてみたい.
結石の検査を進めていくと,超音波検査とCT検査どちらが優れているか?と問われることがある.両検査は結石を見つけ出すということでは類似するが,それぞれの使用する目的に異なる一面がみられる.このため,回答は使用者の環境,疾患,被検者の状況により異なってくると考える.
もう一度見直そう,という視点から考える.結石の診断能はCT検査の成績が高いが,疝痛患者を目の前にしたとき,この疾患は有る,この疾患は無い,病態の程度を診る,といった基本情報を展開する手軽さを考えてみる.CT検査は病院内で施行までの手順手続きがあり依頼が必要で,ときに造影が求められる.超音波検査は,その場その時に見てみようという感覚で検査が進められる.経過観察には,CT検査が被爆と検査依頼の手続きから頻繁に困難だが,超音波検査はいつでも可能で昨日より今日のほうがお腹が痛いけど,あるいは病変部をもう一度診てみようかなと思った時に気軽に施行できる.一部の大学病院では疝痛時の尿路結石の来院が少ないが,実践病院では急性疾患や炎症性疾患が多いので,医師(技師)にとっては超音波検査が本来のその場で用いて情報を得る聴診器代わりに使えるアイテムとなる.観察する画像は,CT検査は静止画だが,超音波検査はリアルタイムな動きを得られる.このため,尿管膀胱移行部に陥頓した結石例でも膀胱への尿の排出の有無まで評価が可能である.疾患の確定と否定では,右下腹部痛で総腸骨動脈交差部の結石,急性虫垂炎,炎症性腸疾患,婦人科疾患を,一回の検査で同時に進めて情報を得ることができるのも,もう一度見直しされる利点である.
【まとめ】
CT検査の診断能は高いが,熟練した医師や技師によって得られる尿路結石の超音波検査の情報はCT検査では得られ難い一面もある.超音波検査の現場への指導と教育をさらに高めていき,尿路結石の超音波診断を見直すことが大切である.