Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 腎泌尿器
パネルディスカッション 腎泌尿器1尿路結石の超音波診断をもう一度見直そう!

(S406)

尿路結石の超音波診断と再発予防

Ultrasonographic diagnosis for urolithiasis and a role of ultrasonography for stone prevention

山口 聡

Satoshi YAMAGUCHI

医療法人仁友会北彩都病院泌尿器科・尿路結石センター

Department of Urology, Urinary Stone Medical Center, Kitasaito Hospital

キーワード :

【背景と目的】
尿路結石の画像診断としては,古くから腹部単純X線撮影(KUB),排泄性尿路造影(IVP,DIPなど)や超音波断層法(US)が用いられてきた.しかしCT検査の普及と一般化によって,現在では尿路結石の確定診断には,単純CTが推奨されている(尿路結石症診療ガイドライン第2版:2013年).尿路結石症は,メタボリックシンドロームや生活習慣病と深い関係があることが知られ,診断や治療のみならず,その原因追求や再発防止も重要となってきた.尿路結石患者の長期的観察において,CTを中心とするX線検査のみに依存するのではなく,X線被曝がなく安全性の高いUSの価値を再検討すべきと思われる.
【対象と方法】
2012年4月から2013年12月まで,当院において尿路結石が疑われた3314例に対して5401回(1.6回/例)の腎USが施行された.その間に尿路結石に対する何らかのinterventionは296例(857件)に行われ,これらについて,USの施行時期,目的,所見,回数などを,CTとの比較も加えて検討した.
【結果】
interventionの内訳は,体外衝撃波砕石術(ESWL)555件,尿管ステント手術220件,経尿道的尿管砕石術(TUL)49件,腎瘻関係手術15件,その他18件であった.そのうちUSは97.0%(287例)に施行され,intervention後の経過観察も含めると,合計1019回(3.6回/例)に行われていた.USの目的は,尿路結石による尿路評価(水腎の有無や水腎の程度など)が最も多く,結石の存在や位置の確認に用いられることは少なかった.USは,初診時,再診時,術前,術後,退院後など,いずれのタイミングでも平均的に行われており,ESWL後では腎被膜下血腫などの合併症の確認,腎瘻造設後や尿管ステント留置後ではカテーテルの位置や水腎の経過など,治療効果の確認にも使用されていた.一方,interventionが施行された患者のCT検査は,99.3%(294例)で,合計1120回(3.8回/例)施行されており,USより若干多かった.
【考察と結論】
USは,上部尿路の閉塞による水腎や水尿管の程度を診断するのに有用であり,尿路結石症診療ガイドライン(第2版)においては,急性腹症で尿路結石が疑われる場合,まず超音波検査を行うことが推奨されている(グレードB).尿路結石の存在診断としては,腎,上部尿管や膀胱近傍の結石を識別することが可能で,これらの部位に存在する5 mm以上の結石では,感度,特異度とも95%以上と考えられている.しかし,それ以外の部位や小結石を含めた尿路結石全体の存在診断となると,感度78%,特異度31%と下降するため,尿路結石の確定診断には,高い感度(94%以上)と特異度(92%以上)を有する単純CTが推奨されている(グレードA).欧米のガイドラインでも同様な見解であるが,主にX線被曝の観点から,妊婦や小児の画像診断の第一選択は,今もなおUSで一致している.一方,尿路結石の再発に関して,画像診断による経過観察法としては,尿路結石症診療ガイドライン(初版:2002年)に記載があり,1)腎結石がない場合:1年毎のUSとKUBが,2)腎結石を有する場合:6ヶ月毎のUSとKUBが,それぞれ推奨されている.このように尿路結石の画像診断は,その状況に応じた選択がなされるべきであり,医療コストへの配慮も必要である(診療報酬点数:KUB 68点,US 530点,CT(16-64列)900点).尿路結石症の診療において,治療が優先されるあまり,結石除去後の経過観察や再発防止が軽視されている現状がある.尿路結石症は,再発しやすい疾患であり,生活習慣病やメタボリックシンドロームとも密接な関係があることから,尿路結石の診断と再発防止に関わる画像診断として,USを積極的に活用すべきであろう.