Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 血管
パネルディスカッション 血管1血管エコーガイドラインを検証する

(S397)

「下肢深部静脈血栓症の標準的超音波診断法」を検証する

The Validation of Criteria for Ultrasound Diagnosis of Deep Venous Thrombosis of Lower Extremities

西上 和宏

Kazuhiro NISHIGAMI

済生会熊本病院集中治療室

Department of Critical Care and Cardiology, Saiseikai Kumamoto Hospital

キーワード :

【背景と目的】
深部静脈血栓症(DVT)は,肺塞栓や奇異性脳塞栓症の原因となり,その早期発見と予防が重要である.血管エコーは,無侵襲の簡易な検査であり,DVTの診断に大きな役割を果たしている.一方,DVTのgold standard診断として扱われてきた静脈造影は,その侵襲性と煩雑な手技により現在では施行されることが稀になっている.従って,血管エコーによるDVT診断法をgold standardである静脈造影によって検証した研究は少なく,DVTに対する血管エコーのガイドライン作成を困難にしている.本パネルでは,本学会用語・診断基準委員会で作成された「下肢深部静脈血栓症の標準的超音波診断法」における各DVT評価法を考察し,今後の展望を示したい.
【DVT評価法】
血管エコーによるDVTの診断には,直接法として断層図と圧迫法があり,間接法としてカラードプラによる血流シグナルの欠損の有無とパルスドプラ法による大腿静脈血流波形をバルサルバ負荷およびミルキングを用いて評価する方法がある.断層図は画質の向上により,明瞭に描出される例が増加しているが,探触子から離れた静脈の血栓や描出が不良の例には限界がある.圧迫法は,血栓を遊離させる危険性を有しているため,症例により施行困難なこともある.また,不十分な圧迫により擬陽性と判断する可能性もある.カラードプラを用いた方法は,腸骨静脈から下大静脈の評価では,最も重要であり,大腿静脈以下の末梢も比較的明瞭に血流シグナルが検出される.ただ,ヒラメ静脈では血流シグナルが見られない場合があり,またミルキングなど血流誘発を要する場合もある.さらに,壁在血栓の判断は容易でないことが多い.パルスドプラを用いて大腿静脈の血流波形を評価する方法は,左右差で判断する必要があり,負荷を一定にする必要がある.また不完全閉塞例や側副路の発達した例では感度が低くなる.さらに,ミルキングは下腿の血栓を遊離させる危険性がある.
【展望】
機器の進歩で,画質が向上すれば,断層図とカラードプラのみで,DVTを診断できることが,血栓塞栓症の危険性を回避する上で望ましい.また,gold standardである静脈造影を用いた検証が困難な現状では,造影CTやMRIとの比較試験により,血管エコーのDVT評価法に対する検証が望まれる.