Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 血管
パネルディスカッション 血管1血管エコーガイドラインを検証する

(S397)

腎動脈エコーの意義と重要性について

Significance and putative rol of Renal Arterial Doppler ultrasonography

阿部 倫明

Michiaki ABE

東北メディカル・メガバンク機構,(兼)東北大学病院地域医療支援部門,腎高血圧内分泌科

Department of Community Medical Supports, and Division of Nephrology, Endocrinology and Vascular Medicine, Tohoku Medical Megabank Organization, Tohoku University, and Department of Medicine, Tohoku University Hospital (Concurrence)

キーワード :

腎臓のエコー検査は,水腎症・結石・腫瘍・血栓症・梗塞・動静脈瘻を診断する上で非常に有用な検査である.腎動脈エコー検査の特徴は,ベッドサイドで簡便に行えるだけではなく,腎機能を評価する事が可能である検査手技である.また,腎動脈エコー法は,腎動脈狭窄症の診断には欠かせない検査法となってきた.通常のCTアンギオやMRアンギオは動脈の血管径や動脈壁などの形態評価に優れているが,機能評価は充分には出来ない.
腎動脈の解剖学的な位置が体表面より深いところにあるため,腎動脈エコー検査の技術習得は比較的難しいとされる.しかしながら本検査はベッドサイドで検査が可能であり,また腎機能の悪い患者でも比較的正確に腎動脈の有意狭窄の有無を診断できる.また腎内血流評価(Resistive Indexなど)を用いて,慢性腎臓病患者における腎機能がある程度評価可能となってきた.したがって,本検査を適正に施行できるよう技術を習得することは,高血圧や慢性腎臓病の診療にますます有用になると考えられる.
2011年10月,日本超音波医学会腎動脈エコー標準化小委員会(松尾汎委員長)を発足させた.高血圧や腎臓病の患者が日本国内どこででも安定したクオリティーで腎動脈エコー検査を享受できることを目的に,腎動脈エコー検査の標準化にむけて慎重に審議してきた.この度,『超音波による腎動脈病変の標準的評価法』を発表する予定である.
一方,近年ASTRAL, SRAT, CORALなど一連の大規模臨床研究で,腎動脈狭窄症に対するカテーテルによる腎動脈拡張術・ステント留置術は,集約的内科的治療より優れているとは言えないという結果が出された.腎動脈狭窄症は,腎臓の血管異常が腎血液灌流の低下を引きおこすことが引き金となって腎障害が生じ,全身性の高血圧を発症させたり,腎萎縮に進行させたりする疾患である.腎動脈狭窄の診断のみならず,腎内血流の機能評価は腎動脈ドプラーエコーで期待される点である.
これらの点を踏まえて,腎動脈エコーの意義と腎血管性高血圧の診断基準について総説するとともに,今後求められる腎動脈エコー検査の役割について述べたい.