Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 血管
シンポジウム 血管3血管エコー:どのような時に医師に報告するか?

(S392)

どのような時医師に報告するか〜下肢動脈領域〜

When should we report to the physicians in PAD practice ?

中野 明子

Akiko NAKANO

福岡山王病院診療技術部検査室

Department of Pathology, Fukuoka Sanno Hospital

キーワード :

【はじめに】
近年は高齢化や食の欧米化,過食による生活習慣病が増加し,その合併症として閉塞性動脈硬化症(PeripheralArterialDisease:以下PAD)の罹患者が増加している.その数は40〜50万人とも言われその多くは慢性による閉塞性動脈硬化症である.しかし,救急医療として血栓性の急性動脈閉塞や拡張型病変である動脈瘤も形状により緊急を要することがあり,状況に応じた対応をしていくことが重要である.
【日常業務と医師への連携】
下肢動脈の検査時において病変があれば,その部位,病変の程度,病変長,治療を必要と判断したときには血管径の記載を行なう.また患部のプラークの状態も経時的変化を見る上で,きめ細やかな表記をすることが理想的である.ただその中で血栓性の画像がみられた場合にはコメントを書く以外に医師への連絡を必要とする.その他可動性プラーク,潰瘍形成などソフトプラーク画像以外にも医師への連絡を忘れてはならないものがあることを熟知しておかなければならない.また膝下部では血管外病変ではあるが外膜嚢腫があり治療方針の変更をきたす場合があるので医師に口頭連絡することを推奨する.
経皮的血管形成術を前提にした患者に関しては,穿刺部である鼠径部や膝窩部の動脈チェックを行ない病変の有無を記載する.石灰化の強いプラーク,高度な狭窄や閉塞などアプローチするには不当の場合には医師への連絡が必要である.
EVT治療後に関して,穿刺部位に皮下出血の見られる場合は,その部位のエコー検査を必ず行う.仮性瘤,A-Vシャントが見られた場合は医師へ連絡し準緊急にて対処を行なう.その時患部に対してマーキングしておくことがポイントとなる.あと,治療を行なった患肢に血栓や解離が生じていないかのチェックは怠ってはならない.
経過観察は少なくとも年に1〜2回は検査を行っているが,跛行や痛みなど自覚症状が出現したときには予約とは関係なく柔軟に対応し治療のタイミングを見逃さないよう配慮している.
医師への連絡を必要とする二大病変を記載する.
1.急性下肢動脈閉塞
急性動脈閉塞の原因としては心房など他の部位に生じた血栓が遊離し起きる動脈塞栓症や,PADの急性増悪による動脈血栓症,さらには動脈解離や外傷性動脈閉塞等がある.急性閉塞の場合は血行再建やFogartyカテーテルによる血栓除去をおこなうこともあるので医師への早急な連絡が必要となる.急性閉塞を認めた場合は1)閉塞の部位2)閉塞範囲3)ASOの合併の有無4)動脈瘤の合併の有無(特に膝下動脈瘤)5)左心耳,左心房内血栓の有無等その原因推測に繋がる情報提供の検索をする.バイパス術が必要な可能性があれば伏在静脈の評価が必要となる.
2.動脈瘤
主幹動脈の動脈瘤は正常の太さの1.5倍以上の拡張があるとき表現する.進行としては4cmまではゆっくりと,4cmを越えると年に0.1〜0.5ずつ急速に拡張するため4cmを基準として医師への連絡を必要とする.5cmを越えると破裂の危険性が増し手術適応となる.また小さな瘤でも嚢状瘤のばあいは破裂の危険性があり医師への連絡を義務づけている.
末梢動脈瘤は正常の太さの2倍以上の拡張があるとき表現する.最も多いのが膝窩動脈瘤で,急性動脈閉塞で見つかる事が多い.拡張径3cm以上あれば破裂の危険性が出るため医師への連絡が必要となる.いずれの場合も動脈瘤の破裂は大量出血を余儀なくされ重篤なショックに陥ることが多い.破裂による死亡率は欧米で80-90%,破裂前に見つかり治療にたどりつくことが出来た場合は1〜4%に激減することを忘れてはならない.