Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 血管
シンポジウム 血管3血管エコー:どのような時に医師に報告するか?

(S391)

頸動脈超音波検査でこんな所見が得られたら医師に連絡しよう!

Let’s contact a doctor at the time of such findings by carotid sonography

寺澤 史明, 遠藤 淳子

Fumiaki TERASAWA, Junko ENDO

製鉄記念室蘭病院臨床検査科

Clinical Laboratory, Steel Memorial Muroran Hospital

キーワード :

【はじめに】
頸動脈超音波検査は,全身の動脈硬化の進展を評価する上で非常に簡便で有用な検査である.そのため,スクリーニング目的から病変診断,治療効果判定にいたるまで広く利用されている.しかし,検査目的や臨床所見と乖離した超音波所見に遭遇することも少なくない.得られた所見から,どのようなタイミングで担当医に報告する必要があるのかを当院での運用と併せ述べる.
【検査結果の報告】
当院では,ルーチン検査は通常予約検査として実施している.この場合,得られた所見が臨床所見や検査目的,前回所見と照らし,明らかな乖離や病変の急激な進行がある場合を除いて医師へ報告することはせず,レポートでの提出としている.また,病変の進行を認めた場合でも,検査後すぐに診察がある場合では,症候性を除いて直接医師への報告はしていない.
頸動脈超音波検査において,早急な連絡が必要となる所見としては,脳梗塞など脳虚血を発症する危険性が疑われるものが考えられる.粥腫や血腫などを反映している低輝度プラークやエコー輝度が不均一なプラーク,可動性プラークなどは脆弱で不安定なプラークと考えられており,脳梗塞を発症し易いことが報告されている.また,潰瘍形成や表面性状が不整なものも脳梗塞の危険因子と言われている.中でも低輝度プラークや可動性プラーク,潰瘍形成を認めた場合は,進行例が多いため早急な報告が必要となる.
頸動脈解離もまた緊急を要する.胸部大動脈解離から伸展する症例が多いが,外傷性や特発性など限局性のものも存在し,若年性脳卒中の原因のひとつとして重要視されている.脳梗塞では,発症後4.5時間以内の場合はrt-PA(アルテプラーゼ)静注療法を実施することがあるが,大動脈解離が存在する場合は禁忌であり,解離の有無を早急に報告することは極めて重要である.
頸部血管超音波検査を実施する場合は,血管周囲にも注意を向ける必要がある.頸静脈に血栓を認める場合では,肺血栓塞栓症を発症する危険性があるし,頸部リンパ節腫大を認めた場合では悪性腫瘍が存在する可能性もある.また,時に甲状腺に腫瘍を発見することもある.このような場合には,依頼科とは別の診療科と連携する必要があり,早急な報告が治療に役立っていく.
【おわりに】
頸動脈のみならず,超音波検査を実施した場合は,得られた所見からどのような疾患が考えられるか,今後どのように病態が変化するのかを推測する必要がある.また,得られた所見は的確な時期に臨床側へ伝えなければ,検査を実施した意味合いは低下してしまう.早急な報告の必要性を判断することはもちろん,臨床との連絡体制の構築も重要と考える.