Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 血管
シンポジウム 血管2血管エコーのドプラ法で何処まで診るか?:評価法と工夫

(S389)

静脈疾患

Vein disease

山本 哲也

Tetsuya YAMAMOTO

埼玉医科大学国際医療センター中央検査部

Central Laboratory, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan

キーワード :

【はじめに】
超音波ドプラ法は血管領域のみならず,全身のすべての領域で応用され,日常診療に有益な情報が得られる.しかしながら,ドプラ法の特徴を十分に理解せずに使用すると,誤診をまねくことがある.本講演では,深部静脈血栓症と静脈瘤などの静脈疾患におけるドプラ法の役割と評価方法,検査時の留意点や工夫などについて考察する.
【ドプラ法の種類】
超音波ドプラ法はカラードプラ法やパワードプラ法,パルスドプラ法,連続波ドプラ法等が利用されている.いずれも血管エコー検査で有効性は高いが,静脈疾患では高速な血流速度を検出するための連続波ドプラ法の使用頻度は低い.
【ドプラ法の役割】
静脈疾患におけるドプラ法の役割は,血管の同定や血流速波形の検出,血管開存性の確認,血流方向と時間の測定,動静脈瘻の検出などに有効である.
【ドプラ法の評価方法と留意点】
1.血流速度の検出:
静脈疾患では動脈検査のような最高血流速度を検出する意義は低い.その理由は,四肢の筋収縮による筋ポンプ作用や呼吸,体位,静脈弁の逆流阻止機能,流入する動脈血圧など様々な規定因子によって静脈還流は大きく左右されるため,再現性が悪く,客観的な指標にはなりにくいためである.利用する場合は,条件を同一にして左右で比較することが大切である.日本超音波医学会における『下肢深部静脈血栓症の標準的超音波診断法』では,呼吸負荷法として深呼吸させた際の大腿静脈血流速変動を観察し,中枢側病変を推測することを推奨している.本法は確定診断にはならないが,参考所見として有効性が高く一般に用いられている.
2.血管開存性の確認:
近年の超音波装置では高分解能断層画像により,一定の条件下において流動エコーが観察され,Bモードでも血流情報が得られ血管開存性を確認できる症例もある.しかしながら,Bモード単独で血管の開存を判定できない症例では,ドプラ法が有効である.カラードプラ法を用いて血流シグナルが血管内部全体に検出されれば,同部位の開存が証明される.一方,血流シグナルが検出されない部位では,判定前に一度再考が必要である.通常,静脈血流は低流速であり,装置条件を低流速血流が検出できるように調整しなければならない.また,静脈血流を誘発するための手技を工夫する必要がある.これらに留意して判定しなければ,正確な診断はできない.
3.血流方向と血流時間の確認:
弁逆流に伴う弁不全の判定は,血流方向を確認することによって行える.但し,安静状態では描出不良なこともあり,弁に血流負荷をかける血流誘発法が必要である.通常,観察部位の末梢側をミルキングして急速な順行性血流が生じ,解除後に血流が停止する.しかし弁不全が存在する場合,解除後,持続時間の長い逆行性血流が生じることで判定できる.一般に0.5秒以上を有意逆流とし,持続時間の短い逆流例ではパルスドプラ法を用いて客観的に評価する.逆流の判定に苦慮する際,直ぐに圧迫を解除せず,5〜6秒間圧迫を保ち,その後,解除すれば判定は確実になる.深部静脈血栓症の合併が疑われる場合,血栓を遊離させる危険性もあるためミルキングは留意したい.
【おわりに】
静脈疾患を正確に診断するためには,Bモードとドプラ法を併用させて検査することである.ドプラ法を活用するためには,静脈の生理やドプラ法の特徴を理解し,検査に望むことが大切である.