Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 血管
シンポジウム 血管2血管エコーのドプラ法で何処まで診るか?:評価法と工夫

(S387)

頸動脈

Carotid artery

長束 一行

Kazuyuki NAGATSUKA

国立循環器病研究センター脳神経内科

Neurology, National Cerebral and Cardiovascular Center

キーワード :

頸動脈超音波検査でドプラ法を用いて計測する場合,最も重要なものは狭窄後の収縮期最大血流速度(PSV)の計測による狭窄率の推定であると考えている.頸動脈超音波検査での狭窄率の計測法は数多くあるが,世界的に見てPSVがgold standardとなっていることは間違いない.また計測法に関してもDuplex Ultrasoundが基本であるので,角度補正を行わなければならない.狭窄の閾値に関しては,NASCET法での70%に関しては,欧米でのメタアナリシス,日本人での報告供に200cm/secが至適とされていて問題はないと考える.NASCETでの50%狭窄に関しては日本では150cm/secという数字が一人歩きしてきた経緯があるが,欧米でのメタアナリシスでは130cm/secが妥当とされており,頸動脈超音波検査がスクリーニング検査であるという位置づけから考えるとより低い値を閾値とする方がいいのかもしれない.50%と70%以外の狭窄率については大規模データがないために,必要であれば新たにデータを集積してゆく必要がある.より高度な狭窄の場合には血圧などの影響も受けやすくなるため,ICA/CCA比など他の方法も考慮する必要があるかも知れない.またより早い血流速度になる場合,リニアプローブでは計測不可能な場合も出てくるため,セクタプローブの利用も考慮する必要がある.狭窄率の評価はスクリーニングのみならず,経時的な変化を見てゆく場合にも重要である.この場合,PSVがどの程度再現性があり,どの程度変化すれば有意な変化であるのかについてもあまりデータはない.PSVがいいのかICA/CCA比,もしくは血流速度ではなくBモード画像からの狭窄率を求める方法についても,改めて比較をしてみることが必要と考えられる.
狭窄率以外にドプラ法で求められるデータとしてよく用いられている指標に,ED ratioがある.左右総頸動脈の拡張末期血流速度の比であるが,これについてもデータがよく理解されていない場合がある.1992年にYasakaらが報告した論文は急性期心原性脳塞栓症を対象としたデータで,1997年のKimuraらによる論文は急性期心原性脳塞栓症とアテローム血栓性脳梗塞を対象としたデータである.また両者ともに閉塞血管の診断で狭窄ではない.またED ratioは簡単なように思えるが臨床現場では角度補正が不十分であったり,左右を計測した時間的間隔により差が大きく出る場合があるので注意が必要である.
この他に論文があり,比較的普及しているものとしては椎骨動脈閉塞の部位診断,鎖骨下動脈盗血現象の診断があげられる.椎骨動脈に関しても閉塞部位の診断であり,狭窄は含まれていない.また両側閉塞の時にはフローチャートがあてはまらなくなる.鎖骨下動脈盗血現象に関しては,あくまで盗血現象の存在と,鎖骨下動脈の狭窄性病変を示唆する所見であり,めまいがあるからといって鎖骨下動脈盗血症候群と安易に診断してはならず,患側上肢の虚血に伴って症状が出現するかを確認する必要がある.