Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 血管
シンポジウム 血管1一度は観ておきたい血管エコー画像

(S382)

大動脈領域

Aorta field

中野 英貴

Hidetaka NAKANO

小張総合病院診療協力部

Clinic Cooperation Department, Kobari General Hospital

キーワード :

【はじめに】
大動脈領域は,解離や瘤破裂などの重篤な疾患も含まれ,超音波検査に携わるうえで,必ず評価しなければならない領域と言える.しかし胸部では,肺や胸骨,腹部では消化管ガスにより描出が困難となることもあり,その描出法や評価法を理解しておく必要がある.
【超音波検査適応疾患】
大動脈やその分枝血管の拡張や瘤形成,閉塞や狭窄などが評価の適応となるが,大動脈疾患は,胸痛や腹痛などの原因となることもあり,鑑別疾患として大動脈疾患も念頭に検査を進めるとよい.
【描出法】
消化管ガスの排除や,最良なアプローチポイントからビームを入射する上で,積極的な体位変換は有用である.さらに胸骨上窩からのアプローチや,側腹部や背側からのアプローチも大動脈を広範囲で評価するうえで必要である.
【ドプラを上手に使いこなす】
血管領域の評価では,ドプラは大変有用であり,Bモードでは病変が不明確な場合でも,血流速度を計測することにより狭窄の有無が明確となる.またカラードプラを用いることにより閉塞範囲や側副路などの血管構造を広い範囲で理解できる.
【大動脈瘤】
腹部大動脈瘤は,ほぼ無症状で経過し,スクリーニング検査時に偶然発見されることが多い.しかし破裂した際は大変死亡率が高く,決して見落としてはならない疾患である.大動脈の正常径は胸部で30mm,腹部では20mmとされ,正常径より1.5倍以上拡張したものを動脈瘤と定義している.
①動脈瘤計測:腹部大動脈瘤は加齢とともに蛇行することが多く,一般的には短軸断面で計測を行う.瘤最大部位での長軸と直行する断面を描出し,最大短径を正確に計測する.
②評価ポイント:腹部大動脈瘤を評価する上で,まず瘤の形態を評価し,正確な直交断面にて最大短径を計測する.次に解離の有無や,可動性プラークの有無などの内部性状を観察するとよい.また今後の人工血管置換術やステントグラフト内挿入術も考慮し,分枝血管との距離を計測しておくとよい.
③炎症性動脈瘤:腹部大動脈の瘤状の拡張に加え,拡張した血管の壁肥厚,大動脈周囲や後腹膜の広範な線維化を伴い,周囲臓器との癒着を特徴とした動脈瘤である.腹痛や腹部不快感を伴い,臨床症状を有する動脈瘤を認めた際,炎症性動脈瘤を念頭に注意深く観察する.
【大動脈解離】
急性期において,胸部大動脈の描出が困難な際,頸動脈や腹部大動脈にflapを確認することで,診断の一助となることもある.また,分枝血管への解離の進行や,真腔,偽腔の血流などを評価するうえで,超音波検査は大変有用である.
偽腔開存型大動脈解離:日々の検査の中で偽腔か真腔かの判断に大変苦慮することが多く,分枝血管灌流障害などの原因を推測するうえでも,真腔と偽腔の鑑別は必ず理解しておいたほうがよい.一般的に入口部(entry)の大きさは,再入口部(re-entry)よりも大きいため,真腔より偽腔に圧力がかかりやすく,偽腔は膨らみ真腔は小さくなる.よって真腔のほうが血流は速く,ドプラ上も明瞭に描出される.また拡張早期に拡張するほうが真腔,拡張が遅れるほうが偽腔であり,Mモードを用いると鑑別しやすい.
【まとめ】
大動脈疾患は,動脈硬化,高血圧,血管雑音,腹痛や腹腔内出血など,実際の依頼目的は大変多く,さらに動脈瘤は破裂の危険性があるので,評価や計測は精度よく行う必要がある.また,狭窄や閉塞などの評価はドプラが大変有用であり,超音波検査が必須な領域と言える.