Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 コメディカル
パネルディスカッション コメディカル1さまざまな立場の超音波検査士をマネージメントする

(S378)

さまざまな立場の超音波検査士をマネージメントする(フリーで働く超音波検査士)

Management of Registered Medical Sonographer

村上 和広

Kazuhiro MURAKAMI

エムエスエム/小豆嶋胃腸科内科クリニック超音波室

Division of Ultrasound, MSM/Shouzushima Gastrointestinal Clinic

キーワード :

【背景】
1980年に大学を卒業後,岩手県内の検診機関に就職し,1985年から超音波検査に携わってきた.いつかは臨床をと願いながら,結局20年近くの年月が流れていった.検診とはいえ,むしろ検診だからこそ精度の高い検査を目指し,日々努力してきたつもりであるが,現実に立ちはだかる壁は予想外に大きく,常にジレンマとの戦いであった.2003年に一念発起,職場を辞してフリーとして独立することを決意し,現在に至っている.
【現況】
現在は岩手県内10施設,秋田県1施設の医療機関(クリニックがほとんどで,消化器内科を標榜している施設が5施設,一般内科(整形外科含む)が3施設,公的診療所が2施設,乳腺クリニックが1施設)と直接契約して,消化器,乳腺甲状腺,頸動脈の超音波検査を行っている.検査は原則的に午前中で,頸動脈,乳腺甲状腺に関しては検査日を午後設けているクリニックもある.1日の検査件数はクリニックによって異なるが,少ないところで10件前後,多いところで20件弱で,原則予約制で実施している.
【フリーの道を選んだ理由】
最大の理由は就職できる医療機関が県内にはなかったことであるが,自分の腕一つでどこまで通用するか試してみたいという気持ちが芽生えてきた事,以前からご指導いただいてきた消化器内科の医師(超音波専門医のライセンスを決して取ろうとはしなかった)に背中を押された事が非常に大きかった.「開業医や小さな診療所でも,大きな病院に負けないレベルの超音波検査を!」という信念を胸に秘め,フリー検査士の道を歩み続けている.
【マネージメントの実際】
マネージメントするといっても,結局自分自身をマネージメントする他ないわけであるが,フリーの立場としていかにモチベーションを維持しつつ向上心を高めていけるかが大きな鍵である.自分を甘やかそうと思えばいくらでも甘やかすことはできる.しかし,その先に待っているのは医師との信頼関係の崩壊であり,病院で働く検査士と大きく異なるのは,自分のミスが即失職につながるという得も言われぬ緊張感である.逆にいくら報酬を積まれたとしても,信頼出来ない,いい加減な医師の元では働くべきではないという矜持は持ち合わせているつもりである.必要な情報収集,学会や研究会参加に係る経費は全て自己負担ではあるが,それはフリーになった時点で覚悟していたことであり,その分以前よりも真剣さが増したかも知れない.
超音波指導医や専門医に直接指導を受けることはないが,各種学会や研究会では知識の吸収や疑問解消のため臆することなく質問することを心掛けているし,指導医や専門医に勝るとも劣らない優秀な全国の検査士仲間に常に支えて頂いている事が何よりも大きい.
【おわりに】
「フリー」であることは確かに自由ではあるが,全てにおいて自己責任であり,病気や怪我などを含めた自身の都合で仕事に穴を開けることはあってはならない.病院勤務と違って有給休暇もなければ忌引もない.昨年父親が急逝した際には,3ヶ所のクリニックにご迷惑をお掛けしてしまったが,院長先生方のご配慮で無事に葬儀を済ませる事ができたことに心から感謝している.一人で仕事をしている以上,どんなに高邁な理想を掲げようとも,高いモチベーションを維持しようとも,こうしたアクシデントだけは避けて通ることができない.従って,このような事態に遭遇した際にどのように迅速かつ的確に対処し,お世話になっている医療機関との良好な信頼関係をいかに維持していくかが今後の課題である.