Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 コメディカル
パネルディスカッション コメディカル1さまざまな立場の超音波検査士をマネージメントする

(S377)

さまざまな立場の超音波検査士をマネジメントする「健診施設で働く超音波検査士」

Management of Sonographers Working at the Medical Checkup center

杉田 清香

Kiyoka SUGITA

医療法人財団医親会海上ビル診療所医療部臨床検査科

Sonographer, KAIJO BLDG. CLINIC

キーワード :

【背景】
当院は,健診業務・産業保健サービス・治験業務の他,15の診療科目を持つ総合診療所である.前年度来院者数は外来79,000名,健診39,000名,丸の内近隣のオフィスワーカーが主たる顧客である.年間超音波検査件数は外来3,000件,健診30,000件と圧倒的に健診に従事する割合が高いことから,今回は「健診施設で働く超音波検査士」という視点で現状を報告する.
当院の超音波検査士の業務はエコーに留まらず,他の生理検査や検体検査も含まれる.現在常勤技師12名中10名がエコーを担当し,入職後間もない2名は他業務と並行しエコー習得中である.またエコー以外の検査を担当する非常勤技師が14名在籍する.
【教育】
健診超音波検査は,時間的制約のある中無症状の小さな病変を見落としなく拾い上げることを第一の目的とすることから,熟練した技師が担当することが望ましい.しかしながら経験の浅い技師を含む施設が一般的であり,当院も常に何名かが独り立ちに向けた育成過程にあるものの,マンパワー不足や他業務を兼任する必要性からエコー教育だけに専念することは難しい.
3ヶ月もトレーニングすればベテラン技師に準じた検査ができると誤認識する経営者が多い中,当院では先輩技師による指導の下,その時の状況により半年〜1年半で約600件の経験を重ね,独り立ちできるまでに育成する.その間,学会や講習会へ積極的に参加し知識向上に努め,検査士取得が目前になると大学病院や専門病院での研修を経験することにより,日ごろ遭遇できない症例を学ぶ.当院の健診超音波は,判断に迷う症例は専門医・指導医とディスカッションした後の結果報告が可能であるため,まずは確実に拾い上げること,客観性のある画像を残すことに重点を置いた教育を行っている.
他に,健診業務においてはそれに適した接遇が求められるため,エコーの基礎的事項習得と共にホスピタリティ精神を身に着けることを一番初めに教育する.
【環境】
現在当院では常勤の超音波専門医・指導医は不在だが,非常勤医が3名在籍することから,先輩技師のみならず医師ともディスカッションする時間をなるべく設け,納得するまで指導を受けることが可能な環境下にある.しかし,症例数が非常に少ないため大学病院や専門病院での研修を行い,経験を積めるよう考慮する必要がある.一方,院内で発見された異常所見について最終診断を知り得る機会が極端に少なく,やりっ放しの検査になってしまいがちな点が健診施設に多いマイナスポイントであり,技師のモチベーション維持に直結する問題点でもある.
また健診施設では,乳腺超音波や心電図検査に対応するため一般的に女性技師の需要が高く,当院も在籍する全ての技師が女性である.女性のみの職場では,女性ならではのイベントも多く,ようやく一人前に育ったと思うと離職するケースが跡を絶たない.
【待遇】
当院検査科では超音波検査士取得を必須としているものの,職場での認知度は低く,検査士取得の有無が直接給与に反映されることはない.強いて言えば,科内で必須とされる業務に対し職務が果たせているか,他業務と同等に人事考課の対象とされるのみである.
ただし個人の資格は即ち施設の資格という認識はあり,取得に際して金銭面での支援を得ることは可能であるが,これは資格全般を指すもので超音波検査士に限定されない.
健診では,超音波検査士取得の有無よりも1時間あたりの検査件数を問われ,質は二の次と言わんばかりの施設も多くみられる.エコーは個人の技量差が大きいと言われながらも他の生理検査と比較し付加価値は高くなく,超音波健診が一般的になった現在も給与に反映されにくい印象がある.