Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 頭頸部
シンポジウム 頭頸部1耳鼻咽喉科・頭頸部領域の超音波診断

(S372)

造影超音波を用いた頭頸部癌頸部リンパ節転移の診断

Contrast-enhanced ultrasonography to detect lymph node metastases of head and neck malignanncies

志賀 清人

Kiyoto SHIGA

岩手医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科

Department of Otolaryngology-Head & Neck Surgery, Iwate Medical University

キーワード :

我々はこれまで造影超音波の頭頸部癌頸部リンパ節転移診断への応用について検討を行って来たのでその概要について報告する.
これまで頸部リンパ節転移の診断には,触診以外ではCTやMRI,超音波等の画像診断が用いられて来た.しかしながら,大きさ,周囲組織への浸潤,内部構造の変化など主に形態的な変化から診断がなされており,機能的な診断は困難であり,このため転移リンパ節が小さな場合では診断能が著しく低下している.
マイクロバブル造影剤(ソナゾイド)を用いた造影超音波診断は,これまで肝臓腫瘍の鑑別に用いられて来た.これはクッパー細胞がソナゾイドを取り込むことにより,late phaseで肝腫瘍が取り込まないことを利用して診断しようとするものであった.一方,われわれのこれまでの検討では,頸部リンパ節に転移腫瘍がある場合,ソナゾイドによる造影を用いると,腫瘍による毛細血管増生に伴い,急速相でバブルの輝点が増加し,画像として把握できることが明らかになった.この傾向は腫瘍の体積とほぼ比例しており,転移の無いリンパ節ではほとんど造影効果が無いことがわかった.すなわち,ソナゾイドを造影剤として用いた造影超音波診断により,機能的なリンパ節転移診断が可能であることが示唆された.
しかしながら頭頸部の造影超音波診断についてはいくつかの解決すべき問題が存在する.それは1)リンパ節に近接して総頸動脈,外頸動脈,内頸動脈,内頸静脈やその分枝などの血管が豊富であり,マイクロバブルの輝点が被る可能性が高いこと,2)患者の呼吸や嚥下による動揺があり,プローブの手ぶれと相まって揺れの無い画像の取得が困難であること,そして先述したように3)肝腫瘍の診断ではlate phaseを使っているが,頭頸部リンパ節ではacute phaseで見る必要があること,等である.このため既存の超音波診断装置の造影モードと解析ソフトでは対応ができていない.そこで我々は研究の当初から手ぶれや動揺がなく,リンパ節内の造影だけを取り出せるような画像解析ソフトの開発に取り組んで来た.このことは俯瞰的に言えば,頭頸部でうまく解析できる超音波診断装置・解析ソフトがあれば,全身臓器に適応可能という発展性を持っている.
動画が撮影できる超音波診断装置はCT,MRIに比較して安価で場所もとらず,ベッドサイドなど,どこでも実施可能な方法になる.また,CTやMRIで使用されている造影剤は重篤な合併症,副作用が問題となることがあるが,ソナゾイドでは重篤な合併症,副作用の報告は無く,安全性が高い方法と言える.
造影効果の持続についてはCTやMRIの造影に比べ,一度静脈内に投与された造影剤は比較的長く保持され,造影強度は10分後にも最初の1,2分とほぼ同等である.これはこれまでの造影剤には認められない効果である.これは頸部リンパ節全体のスキャンが可能であることを意味しており,重要な所見である.
マウス転移モデルでの血管増生を造影超音波で検出した結果,転移リンパ節ではリンパ節内の腫瘍体積が増加するよりも血管増生の方が速く進行していることを明らかにした.この結果はソナゾイドを用いた造影超音波診断により,転移リンパ節が早期に診断できる可能性を示唆している.
これまでの臨床症例の検討により,種々の悪性腫瘍で頸部転移リンパ節にソナゾイドによる造影効果が認められることが明らかになった.今後は2次元あるいは3次元で血管像を構築することにより,転移リンパ節に特徴的な所見を得られるかどうか,あるいは臨床的に血管密度から転移診断が可能かどうかを検討する予定である.