Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 頭頸部
シンポジウム 頭頸部1耳鼻咽喉科・頭頸部領域の超音波診断

(S371)

耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の超音波新技術:頭頸部腫瘍と健常唾液腺の硬さ診断

Normal salivary gland and head and neck tumor stiffness measured by new ultrasound techniques: VTQ and VTIQ

松塚 崇

Takashi MATSUZUKA

福島県立医科大学医学部耳鼻咽喉科学講座

Department of Otolaryngology, Fukushima Medical University School of Medicine

キーワード :

【目的】
ほとんどの頭頸部癌は扁平上皮癌が多いが,唾液腺癌と甲状腺癌においては扁平上皮癌が少なく組織型が豊富である.唾液腺癌と甲状腺癌における問題のひとつに,治療前に良性と悪性の鑑別が困難な場合が多いことが挙げられる.癌組織では血管と細胞の密度が高いため硬く,この硬化は早期から生じるといわれている.エラストイメージングは超音波機器で組織硬度を画像化し評価する技術で,これまで用手圧迫や音響放射圧の歪みを利用した定性的なイメージングが一般的である.一方,音響放射圧で発生する剪断波(シアウェーブ)の速度を測定し組織硬度を定量的に評価できるようになった.シアウェーブを用いたVirtual Touch Quantification(VTQ)技術は一点の定量測定であったが,シーメンスACUSON S3000では,Virtual Touch IQ(VTIQ)技術で多点の定量測定による詳細な組織硬度のイメージングと定量測定が可能となった.今回我々はVTQとVTIQを用いて健常唾液腺と頭頸部腫瘍の組織硬度を術前に測定し,組織像との関係を調査した.
【対象】
本学附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科外来で超音波検査を行った患者を対象に腫瘍のない健常唾液腺(耳下腺42腺,顎下腺35腺)と24例の頭頸部腫瘍を対象とした.頭頸部腫瘍のうち7例は術後悪性腫瘍(耳下腺癌4例,甲状腺癌2例,転移リンパ節1例)の診断で悪性腫瘍群,残り17例を良性腫瘍群としそれぞれの群の計測値を比較した.
【方法】
シーメンス社製ACUSON S3000を使用し,通常の超音波検査に加えて以下のモードで超音波検査を行った検査結果を抽出した.Virtual Touch TM Quantification(VTQ): 超音波検査でVTQモードに設定し,5mm×5mmで固定されたターゲット関心領域(ROI)を定めて画面上に表れた値を測定した.Virtual Touch TM Imaging Quantification(VTIQ): 超音波検査でVTIQモードに設定し,最大サイズは,25mm×38mmの表示ROIを決定し,表示ROI内の任意の位置に測定カーソル(ターゲットROI)を定めて画面上に表れた値を測定した.
【結果】
健常唾液腺(耳下腺38腺,顎下腺29腺)のVTQは0.7から5.3 m/sで平均2.0 m/s,VTIQは1.0から5.5 m/sで平均2.1 m/sであり,VTQおよびVTIQにおいて耳下腺と顎下腺の間で硬さの差はなかった.
7例の悪性腫瘍群のVTQはいずれも測定限界超(X.XX m/s)で,VTIQは3.9から9.0 m/sで平均6.1 m/sであった.残り17例の良性腫瘍群のVTQは最小0.5 m/sで4例が測定限界超,VTIQは1.6から7.3 m/sで平均3.9 m/sであり,VTIQにおいて悪性腫瘍群は良性腫瘍群より組織硬度が高く(p<0.05),良性腫瘍群は健常唾液腺群より組織硬度が高かった(p<0.001).ROC曲線を用いて頭頸部腫瘍から悪性腫瘍を検出するカットオフ値を算出するとVTQはX.XX m/s(感度100%,特異度65%),VTIQは3.9m/s(感度86%,特異度71%)であった.
【結論】
健常耳下腺のVTQ,VTIQは平均2.0から2.1 m/sであった.VTIQはVTQに比べて測定限界が高く,いずれも悪性腫瘍の診断の一助となる可能性がある.