Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 頭頸部
シンポジウム 頭頸部1耳鼻咽喉科・頭頸部領域の超音波診断

(S370)

耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の超音波診断:これまでの流れと現状,問題点について

Ultrasonographic Diagnosis of the Oto-Rhino-Laryngology・Head and Neck Region

古川 政樹

Masaki FURUKAWA

横浜市立大学附属市民総合医療センター医療情報部

Division of Medical Informatics, Yokohama City University Medical Center

キーワード :

耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域では診断のみならず様々な場面で超音波検査が利用されるようになった.しかし複数科の医師や検査技師が関与しているにもかかわらず,これらの領域全体に共通の用語,診断基準が未だ明確には定められていないため,いくつかの問題が生じており,今後,この分野でさらに有効に超音波診断を行っていくためには,一定の整理を行う必要があると思われる.ここではとくに頸部を中心に,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域についてこれまでの流れを踏まえ,現状,問題点の概要を述べる.
頸部では甲状腺以外にも,唾液腺,リンパ節,その他,多くの臓器が超音波検査の対象となるが,表示方法,診断基準などが定められているのは甲状腺,動脈のみである.そのため,頸部全体を対象に画像を記録する場合は,日本超音波医学会により1986年に発表された『超音波断層像(乳腺・甲状腺)の表示方法について』を準用することになるが,凹凸の多い頸部全体で使うには十分とはいえず,何らかの新たな表示方法の設定が求められる.また甲状腺に関しては結節診断基準が2011年に再改訂されたが,甲状腺以外の疾患に使うには,当然,無理があるので,超音波検査を活用するために,どこまで,それぞれの臓器,疾病に表示方法,診断基準を設けるかどうかも含めて,検討が必要と思われる.
以下,問題となる具体例を提示する.
リンパ節の場合,転移の有無を診断することは臨床上,重要であり,大きさは有用な基準の一つとされるが,肝心な大きさ計測の標準的方法は決まっておらず,用語も統一されていない.最近は内部エコーや血流分布,硬さなども有用とされており,まず,表示方法,用語等を決めたうえで,新しい情報も加味した診断基準を早い時期に確定することが望まれる.
顎下腺の表示については,顎下部の皮膚が体軸と平行でないこと,顎下腺の最大径が甲状腺の長軸と異なる向きにあることなどから,顎下腺横断像,縦断像が頸部横断像,縦断像と大きく異なる面になり混乱を招く可能性があるので,頸部全体の表示方法と矛盾しない内容になるよう配慮し決めていく必要がある.
この他,頸部では,病変の穿刺吸引・薬剤等注入,中心静脈穿刺,胃管挿入など超音波ガイド下に行われる手技も多いが,頭頸部は超音波の専門領域として扱われていないという実状がある.
以上述べたように,頸部に関係した超音波診断の表示方法,用語等は頸部全体や甲状腺,頸動脈以外の臓器を扱うには十分とはいえない.検査結果の表示方法,記載にはそもそも客観性が求められ,誰が見ても共通の理解ができなければならないことから,頸部超音波診断が必須の検査法となった今日,教育等の観点からもまず,表示,用語などに関する共通認識の形成を関係者が積極的に進めていくべきであると考える.