福原 隆宏, 松田 枝里子, 北野 博也

Takahiro FUKUHARA, Eriko MATSUDA, Hiroya KITANO

鳥取大学医学部感覚運動医学講座耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野

Department of Otolaryngology-Head and Neck Surgery, Tottori University Faculty of Medicine

キーワード :

頭頸部領域の病変において，表在で高い分解能を誇る超音波検査は不可欠なものになっている．頭頸部領域は複数の臓器が狭い頸部に密集している解剖学的特徴がある．このため超音波の役割として次のように大別できる，1）解剖構造の特定，2）性状の把握，3）侵襲的検査や治療の補助，4）新しい使用方法，である．それぞれの役割を以下に詳しく述べる．
【1．解剖構造の特定】
頸部の異常を訴える患者に，器質的な異常がないかのスクリーニングとしてまず超音波検査が施行される．頸部腫瘤を触れる場合は，その腫瘤が頸部のリンパ節なのか，唾液腺内なのか，甲状腺内なのかが詳細に特定される．頭頸部癌ではリンパ節の転移の範囲から病期を診断し，逆に転移したリンパ節の区域から原発を特定することにも役立つ．また，詳細な解剖が描出できるため，術前の手術シュミュレーションにもなり，若手の教育にも役立つ．さらに，気管切開など緊急で安全に行う必要がある手術でも，術前に解剖の特定を行っておけば，安全に迅速な手術を行うことが可能となる．
【2．性状の把握】
超音波検査の大きな利点は，リアルタイムに対象の性状を知りうることにある．頸部のリンパ節に腫脹があるとき，反応性の腫脹なのか，転移性のものなのか診断できる．感染性の腫脹においては，リンパ節内の微小な石灰化をとらえることで結核性のリンパ節炎を診断でき，カラードプラで血流をみることで急性壊死性リンパ節炎や亜急性壊死性リンパ節炎の診断が可能となる．転移性リンパ節では，節外浸潤の有無が分かり，上皮系腫瘍の転移なのか，悪性リンパ腫なのか予測できる．内部が液状の腫瘤であればリンパ管腫やガマ腫の診断が可能で，嚢胞性病変である正中頸嚢胞，側頸嚢胞，甲状腺や中咽頭癌に多い転移形態を診断できる．唾液腺では腫瘍の診断や自己免疫疾患や感染などのびまん性疾患の診断にも役立つ．
【3．侵襲的検査や治療の補助】
経皮的穿刺吸引細胞生検や経皮的穿刺組織生検に超音波を併用することにより，安全に確実な検査が可能となる．他，経皮的エタノール注入療法，OK-432の注入療法，膿瘍穿刺や膿瘍切開術に使用する．また，中心静脈ラインを確保するための中心静脈穿刺や，抹消血管ラインが確保しにくい場合には末梢血管の穿刺にも有用となる．中心静脈栄養のためのポートの埋め込みでは術中に使用する．
【4．新しい使用方法】
近年，エラストグラフィーによる硬さの評価が新しい指標となりつつある．圧迫したときの組織のひずみを評価するエラストイメージングやシェアウェーブの伝達速度を測定することで組織弾性評価するシェアウェーブエラストグラフィーに大別され，頭頸部領域でもその有用性について検討されている．肝臓のエコーで行われる造影検査も頭頸部での使用が試みられつつある．これらの新しい技術とは異なるが，われわれは従来と違った方法で超音波を利用し，音声の評価がどの程度可能かを検討した．最後にその工夫と結果を示す．