中野 恵一, 鈴木 眞一, 鈴木 悟, 福島 俊彦

Keiichi NAKANO, Shinichi SUZUKI, Satoru SUZUKI, Toshihiko FUKUSHIMA

福島県立医科大学内分泌甲状腺学講座

Department of Thyroid and Endocrinology, Fukushima Medical University

キーワード :

現在体表用超音波機器の大半にドプラモードが装備されるようになり，臨床の現場においてもその有用性が認識されつつある．今回は，当科の手術症例で，良悪性の鑑別にカラー・パワードプラ法（以下ドプラ法）がどのように関わっているのかを検討した．
対象は当科で2010年1月から2012年12月に手術が施行され病理診断が確定した甲状腺結節のうち，Bモード，ドプラ法およびエラストグラフィーの超音波診断が術前に施行された171例である．良性91例（濾胞腺腫（以下FA）44例，腺腫様甲状腺腫（以下AG）45例，橋本病2例）と悪性80例（乳頭癌68例，濾胞癌5例，低分化癌2例，髄様癌4例，未分化癌1例）である．また血流情報のことがあるため，自律性機能性甲状腺結節（以下AFTN）の15例は別途検討した．ドプラ法は基本的にパワーモードで計測し，それぞれの超音波機器で腫瘤以外の周囲組織でクラッターが発生しない程度にカラーゲインを最大限に調整した．また血流分布を辺縁にのみのもの「辺縁型」，腫瘤内部に認めるものを「内部型」辺縁，内部両者に認めるものを「混合型」とした．また，血流の多寡を血流Gradeとしてほとんど認めないものをGrade 1，血流の豊富なものをGrade3としその中間をGrade 2とした．また日本超音波医学会編，甲状腺結節（腫瘤）超音波診断基準に基づいてB-modeでの評価を行ない，またエラストグラフィーのGrade分類，Strain Ratio（SR）についても検討した．
血流分布については，悪性で内部型が有意に多く，また良性では混合型が有意に多かった．AFTNは77％が混合型であった．
血流GradeはAFTNが最も高く，次いで良性，悪性の順となった．
良性においてAG，FAとを比較すると，AG血流Grade1が多く，FAではGrade2,3が多くなった．
濾胞癌では，Bモード診断基準では良悪性の境界であり，内部型，血流Grade2，エラストGrade3-4，SR＜0.4などが特徴的な所見であった
またAFTNは全例血流豊富であるが，エラストはGrade1-2がほとんどであり鑑別可能であった．
以上より，ドプラ法では腫瘍全体では血流は必ずしも多くなく，内部にのみ血流が見られる場合には悪性を想定する．ドプラ法単体で，良悪性の鑑別は困難であるが，Bモード，エラストと組み合わせの診断を行なっていく上で，大いに活用すべき検査手技と考える．