Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 甲状腺・副甲状腺
パネルディスカッション 甲状腺・副甲状腺1甲状腺腫瘤と超音波診断 頸動脈エコー,CT,PETなどによる偶発甲状腺腫瘍の取り扱いについて

(S361)

頸動脈超音波検査で発見された甲状腺病変の頻度と経過

The significance of incidental thyroid abnormalities detected by carotid ultrasonography

谷地 繊1, 綾部 征司1, 石崎 一穂2, 関根 信夫3

Sen YACHI1, Seiji AYABE1, Kazuho ISHIZAKI2, Nobuo SEKINE3

1東京厚生年金病院循環器内科, 2東京厚生年金病院中央検査室, 3東京厚生年金病院糖尿病内分泌内科

1Department of Cardiology, Tokyo Koseinenkin Hospital, 2Central laboratory, Tokyo Koseinenkin Hospital, 3Department of Diabetes and Endocrinology, Tokyo Koseinenkin Hospital

キーワード :

【目的】
頸動脈の超音波施行時には,解剖学的位置関係から甲状腺を同時に観察することが可能であり,当院でも甲状腺の同時観察を実施している.頸動脈超音波検査の普及により偶発的に甲状腺腫瘍が発見されることが多くなったが,その頻度と経過についての報告はあまりない.今回我々は,頸動脈超音波検査施行時に偶発的に発見された無症候性甲状腺腫瘍の頻度とその経過を調査することを目的とした.
【対象】
2011年5月から2013年4月までに当院で頸動脈の動脈硬化病変を疑われて施行した頸動脈超音波検査653件を対象とした.
【方法】
超音波機器はTOSHIBA社Aplio80およびPowerVision6000,日立アロカメディカルASCENDUSを使用し,7.5Mhzリニア探触子を用いて,日本超音波医学会頸動脈超音波診断ガイドラインに準じて頸動脈超音波検査を施行した.同時に日本超音波医学会の甲状腺結節(腫瘤)超音波診断基準に準じて全例甲状腺両葉を観察した.甲状腺に形態異常があった患者については,短期的転帰を当院電子診療録にて後ろ向きに調査した.
【結果】
頸動脈超音波検査653件のうち,複数回検査を施行している患者は2回目以降を除外し,計602件(602人)を対象とした.入院患者が318人(52.8%)と約半数であった.患者の平均年齢は67±13歳,女性は223人(37.0%)であった.甲状腺腫瘤は602人中143人(23.8%)で認められ,うち7人は甲状腺疾患の既往があるか又は甲状腺腫瘤を以前に指摘されていた.甲状腺腫瘤を認めた143人中,嚢胞性腫瘤は107人(74.8%),結節性腫瘤は36人(25.2%),石灰化を伴う腫瘤は30人(21.0%),最大腫瘤径10mm以上は50人(35.0%)で認められた.日本超音波医学会の甲状腺結節(腫瘤)超音波診断基準より,悪性腫瘍が否定できずに外科に紹介となった患者は,143人中7人(4.9%)であった.7人の平均年齢は76±8歳と母集団より高く,女性は4人であった.7人中4人が吸引細胞診を施行し,3人は穿刺困難で経過観察となった.吸引細胞診を施行した4人中2人がclassⅢ以上の診断となり,甲状腺部分切除術を施行した.部分切除を施行した2人中1人が病理学的に髄様癌の診断であった.
【総括】
頸動脈の動脈硬化病変を疑われて施行した超音波検査施行時に発見された偶発性甲状腺腫瘍は23.8%におよび,悪性腫瘍は0.17%であった.頸動脈エコーは甲状腺エコーと観察条件の違う超音波検査であるが,偶発的に発見された甲状腺悪性腫瘍の頻度は超音波による甲状腺ガン健診での検出率0.1〜1.5%と同等で,有意義であると考えられた.