Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 甲状腺・副甲状腺
パネルディスカッション 甲状腺・副甲状腺1甲状腺腫瘤と超音波診断 頸動脈エコー,CT,PETなどによる偶発甲状腺腫瘍の取り扱いについて

(S361)

PET/CT及びX線CTにおける甲状腺偶発腫瘍の取り扱い

Role of FDG PET/CT and x-ray CT in detection and management of thyroid incidentaloma

中駄 邦博

Kunihiro NAKADA

北光記念病院放射線科

Department of Radiology, Hokko Memorial Hospital

キーワード :

F-18 fluorodeoxyglucose(FDG)を用いたPET/CT(以下PET),とX線CT(以下CT)における甲状腺偶発腫瘍の取り扱いについて述べる.FDGはブドウ糖と同様にグルコーストランスポーター(GLUT)によって細胞膜を通過して解糖系酵素のヘキソキナーゼ(HK)によってリン酸化されるが,それ以上代謝される事なく細胞内に留まる点がブドウ糖と異なる.FDGは糖代謝の亢進している組織に取り込まれ,特に腫瘍のGLUT1,GLUT 3の発現やHKIIの活性がFDG集積に影響する.決して悪性腫瘍へ特異的に集積するのではない.がん検診,あるいは他の悪性腫瘍の病期診断や経過観察の目的で施行されPET検査で発見された甲状腺機偶然腫を対象とする後ろ向きの検討から,PET偶然腫は30-50%が悪性で,悪性腫瘍のリスクが高いと考えられている.しかし,偶然腫のstandard uptake value(SUV)の平均値や範囲にはかなり幅があり,悪性腫瘍と良性腫瘍の間にはオーバーラップが認められ,SUVから腫瘍の良悪性は判定できない.従って,CTや頸動脈エコーなど,他のモダリテイで発見された偶然腫に対してPETを追加する事はあまり意味がない.PETでは甲状腺への集積の形状が大切で,限局性のFDG集積を認めた場合には悪性腫瘍の可能性があり,超音波検査や細胞診による精査の対象と考えると良い.び漫性のFDG集積を認めた場合は橋本病の可能性が高いが,甲状腺原発悪性リンパ腫もび漫性FDG集積を示す.特に増大する甲状腺腫を伴う橋本病におけるび漫性のFDG集積は注意が必要で,自験例では半数近くが悪性リンパ腫であった.TSH値が甲状腺へのFDG集積に影響するかどうか二ついては意見が分かれている.X線CTで甲状腺偶然腫に遭遇する正確な頻度は不明であるが,PETよりも遥かに多いと考えられる.多くの場合は胸腹部臓器や全身の評価を目的にして撮影されたCTにおいて甲状腺内に低吸収結節が認められるので,画像自体が甲状腺腫瘍の評価に妥当な条件で撮影されていない.経験的にはCT偶然腫は腺腫様甲状腺腫野事が多いが,検査対象となった疾患が悪性腫瘍の場合は甲状腺機への転移も念頭におかねばならないが,嚢胞性か充実性かの区別はであっても,形状やサイズなどCT所見を根拠にした腫瘍の鑑別診断は難しい事が多く,悪性腫瘍を疑う所見が認められた場合は超音波,細胞診の追加が必要となる.以前のCTがあれば所見を較する事も大切である.甲状腺のび漫性積腫大がみられた場合,甲状腺内部の吸収値の低下や,輪郭の凹凸,峡部の肥厚等所見によって橋本病は診断可能であるが,PET同様に悪性リンパ腫との鑑別は困難である,造影検査を行うと瀘胞性腫瘍や機能性結節は乳頭癌よりも強い遷延性の増強効果を示すが,良悪性の鑑別の根拠にはならない.CTの利点としては粗大石灰化を示す結節の評価,巨大甲状腺腫や縦隔内甲状腺腫や異所性甲状腺の評価,悪性腫瘍における周囲組織への浸潤の評価,甲状腺から離れた部位に存在するリンパ節転移の評価,腫瘍の栄養血管の評価,等が挙げられる.