Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 甲状腺・副甲状腺
パネルディスカッション 甲状腺・副甲状腺1甲状腺腫瘤と超音波診断 頸動脈エコー,CT,PETなどによる偶発甲状腺腫瘍の取り扱いについて

(S360)

甲状腺超音波検診における偶発腫瘍の取り扱い

Management of thyroid nodules detected by thyroid ultrasound screening

宮川 めぐみ

Megumi MIYAKAWA

虎の門病院内分泌代謝科

Department of Endocrinology and Metabolism, Toranomon Hospital

キーワード :

近年胸部CTやMRI,頚動脈エコーなどの画像検査の増加に伴い,甲状腺の結節性病変が偶発的に発見されることが多くなった.人間ドックで甲状腺超音波検診を行って甲状腺結節が発見される頻度は,志村らの報告1,2)によると,ドック受診者21,856人において3mm以上の嚢胞性病変は27.6%,3mm以上の充実性結節は22.8%,びまん性病変が11.2%に認められ,全受診者の46.3%がなんらかの所見がみられたと報告している.また,福島での原発事故後の小児甲状腺超音波検診においても,平成25年11月15日までの約27万人の集計で,A1判定(とくに異常なし)が53.0%に対してA2判定(5mm以下の結節あるいは20mm以下の嚢胞性病変)が46.3%と高頻度で認められることが明らかとなっている.一方で,超音波検査での甲状腺癌の発見率は0.1〜1.5%(男性で0.25%,女性で0.72%)と報告されており,また剖検で初めて発見されるラテント癌(潜在癌)は11.3〜28.4%と多いことも報告されている3).
このように偶発的に発見される甲状腺の病変において,どのような所見は経過観察のみでよいのか,あるいは要精査が必要なのか,穿刺吸引細胞診(FNAC)はどのような症例で行うべきかの基準が必要となってくる.
甲状腺内分泌外科学会と日本甲状腺外科学会の合同編集による甲状腺腫瘍診療ガイドライン2010年版4)には,エビデンスベースとした甲状腺悪性腫瘍の術前診断には,超音波検査と穿刺吸引細胞診(FNAC)がグレードAとして推奨されている.2013年に発行された日本甲状腺学会編集の甲状腺結節取扱い診療ガイドライン20135)には,2012年の日本乳腺甲状腺超音波診断会議から出版された甲状腺超音波診断ガイドブック6)に基づき,嚢胞性病変および充実性結節に対してどのように対処すべきかについて詳細に述べられている.今回はこれらのガイドラインの内容に沿った形で実際の多くの症例を提示しながら,超音波診断基準に照らし合わせた良悪性の鑑別診断,嚢胞性病変と充実性結節の場合でのFNACの適応基準について再確認していきたいと考える.また適切な超音波診断を行うことによって,不必要なFNACや頸部CT, MRI検査など医療経済的にも無駄を減らす必要があると考える.
【文献】
1.志村浩己 甲状腺疾患の疫学 日本臨床70:1851-1856,2012.
2.志村浩己 日本における甲状腺腫瘍の頻度と経過 人間ドックからのデータ.日甲状腺会誌 1:109-113,2010.
3.Yamamoto Y et al.: Occult papillary carcinoma of the thyroid. A study of 408 autopsy cases. Cancer 65:1173-1179,1990.
4.日本内分泌外科学会/日本甲状腺外科学会(編):甲状腺腫瘍診療ガイドライン2010年版.金原出版.2010.
5.日本甲状腺学会(編)甲状腺結節取扱い診療ガイドライン2013 南江堂2013.
6.日本乳腺甲状腺超音波診断会議/甲状腺用語診断基準委員会(編):甲状腺超音波診断ガイドブック改訂第2版,南江堂2012.