Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 甲状腺・副甲状腺
シンポジウム 甲状腺・副甲状腺2超音波で迫る副甲状腺(形態,組織,病態,機能まで)

(S358)

超音波で迫る副甲状腺 外科医の立場から

Efficacy of US on surgeon’s view

冨永 芳博

Yoshihiro TOMINAGA

名古屋第二赤十字病院移植内分泌外科

Department of Transplant & Endocrine Surgery, Nagoya Daini Red Cross Hospital

キーワード :

副甲状腺は気ままな臓器である.位置も必ずしも一定ではないし,数,大きさも一定ではない.この様な我儘娘に日々接しなくてはならない外科医にとって,超音波(US)を含んだ画像診断の意義は極めて大きい.一昔前は,画像診断を信じるくらいなら,経験ある外科医を探した方が良い.と言われたが,画像診断の進歩は著しい.特にUSの精度の進歩には目を見張るものがある.本シンポジウムでは外科医から見たUSの有用性につき述べる.
1,部位診断:原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)では,画像診断で腫大した副甲状腺を確認し,その腺のみ切除し,術中PTH monitoringで他に病的副甲状腺が残存していないことを確認するfocused parathyroidectomy(PTx)が普及した今日,画像診断は必須である.慢性腎臓病(CKD)による二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)では,過剰副甲状腺,異所性副甲状腺を含め全ての腺が腫大していると考えてよく,再発・持続性HPTを防ぐためには全ての腺の切除が要求される.SHPTにおいてもUSは我々外科医に部位診断として多くの情報を与えてくれる.更にUSにて,腺の変化,癌の可能性,周囲臓器との関係など外科医にとって重要な情報も提供してくれる.縦隔内の腺の描出が困難,甲状腺腫瘍との鑑別が時に困難と言った欠点も挙げられるがUSは最初に行うべき画像診断であることに間違いはない.
2.副甲状腺機能亢進症の診断: 最近,osteoporosisの診断・治療に際して血中PTH値の測定が頻繁に行われるようになってきた.そこで,PTH値は高値,血清Ca値は正常,骨量はやや減少していると言ったnormocalcemic PHPTと言った疾患群に遭遇する機会が増加している.これらの症例ではHPTの診断に迷うこと,更に手術適応か否かに逡巡することも稀ではない.画像診断で腫大した副甲状腺を確認できればPHPTはほぼ確実となり,安心して手術に臨むことも可能である.
3.二次性副甲状腺機能亢進症における,内科的治療の限界:USはもはや,HPTの診断,部位診断の領域から突出している.単に腫大した副甲状腺がそこに存在するという情報以外に,USにてHPTが内科的治療に反応するか否かを予測できる事がある程度可能となった.ここまで到達するには,SHPTにおける副甲状腺の病理組織学的研究.内科的治療の限界を導き出す臨床的研究.そして超音波検査による腫大腺の大きさの測定技術の進歩.更にそれを有機的に結び付ける臨床医の眼が必要であった.我々のSHPTに対するPTx症例は2013年6月で3000例に到達した.この間約40年間を内科的治療方法によって分類してみると,VDR activator, cinacalcetが出現してから手術適応,手術時の生化学的検査結果などが大きく変化したことが判る.更にこれらの治療法が出現し,USの有用性が単に部位診断から手術適応決定因子に大きく偏位したことが明瞭である.新しいSHPTに対する治療薬が今後出現するであろうが,USはいずれにせよSHPTの治療に重要なヒントを与えてくれるであろう.