Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 甲状腺・副甲状腺
シンポジウム 甲状腺・副甲状腺2超音波で迫る副甲状腺(形態,組織,病態,機能まで)

(S356)

超音波で見る副甲状腺の発生と局在

Diagnostic value of ultrasonography for parathyroid localization and development of parathyroid glands

河村 知史1, 児島 康行2

Chifumi KAWAMURA1, Yasuyuki KOJIMA2

1蒼龍会井上病院臨床検査科, 2蒼龍会井上病院泌尿器科

1Department of Clinical Laboratory, Inoue Hospital, 2Department of Urology, Inoue Hospital

キーワード :

【はじめに】
透析患者に合併する二次性副甲状腺機能亢進症に対し適切な治療方針を決定するため,他検査に比べ侵襲の少ない副甲状腺超音波検査は有用である.内科的治療の効果の判定には腫大副甲状腺の腺数や大きさ・血流の評価が有用であるが,内科的治療に抵抗性を示す場合は選択的エタノール注入療法(percutaneousethanol injection therapy:PEIT)や副甲状腺摘出術(parathyroidectomy:PTx)の対象となるため,超音波検査で正確な副甲状腺の局在と腺数を把握することは大変重要となってくる.ここでは副甲状腺超音波検査を行う技師として,正確な局在診断を行うために必要な副甲状腺の発生学的経路や超音波検査における局在診断の現状について述べる.
【副甲状腺の好発部位と発生学的経路】
上腺は甲状軟骨と輪状軟骨の境界の高さ付近,下腺は甲状腺下極付近に存在することが多くみられる.しかし副甲状腺は支持組織がないため,腫大すると副甲状腺自体の重みで発生学的経路に添って下方へ落ちていく.副甲状腺は上腺と下腺で発生が異なる.上腺は第4咽頭嚢から発生し,甲状腺側葉とともに尾側へ移動して甲状軟骨と輪状軟骨の境界の高さで甲状腺と分離し上腺となる.下腺は第3咽頭嚢から生じ,同じ第3咽頭嚢から発生した胸腺とともに下方へ長い距離を移動して甲状腺下極付近で下腺となる.上腺・下腺とも分離のタイミングがずれると異所性に存在することになるが,下腺は上腺に比べ移動距離が長いため異所性副甲状腺が多く見られる.
【異所性副甲状腺と過剰腺】
二次性副甲状腺機能亢進症では異所性副甲状腺は約10%に存在すると言われており1),胸腺内・甲状腺内・縦隔内・総頸動脈分岐部前面付近に存在する事もあるため,副甲状腺が好発部位に存在しなかった場合は発生学的経路に添って検索すると見つかる事がある.また副甲状腺が5腺以上存在する過剰腺が10〜20%見られるため1)2),4腺描出されても過剰腺の存在を疑い検索を行う必要がある.
【見落としやすい局在】
甲状腺被膜の背側に存在し丸みを帯びて腫大している副甲状腺は小さくても描出可能であるが,薄く細長い形状の副甲状腺や,甲状腺下極から離れて尾側に存在する副甲状腺・甲状腺上極より頭側に存在する下降不全や過剰腺,気管に貼りついて存在している副甲状腺は見落としやすくなる3).
【まとめ】
超音波検査で正確な局在診断を行うことは内科的治療効果の判定や副甲状腺インターベンションの治療方針の決定,合併症の減少や手術時間短縮にもつながる.超音波検査で正確な局在診断を行うためには,副甲状腺の発生学的経路を知り,見落としやすい形状や局在を意識した広範囲な検索を行う必要があると考える.
【参考文献】
1)高木弘,他.:腎性上皮小体機能亢進症の治療.透析患者の骨病変その見かたと考え方(改訂第3版)黒川清,他(編),日本メディカルセンター,東京,P325-335,1993
2)Åkerström G, et al. : Surgical anatomy of human parathyroid glands. Surgery 95: 14-21,1984
3)河村知史,児島康行,他:腎移植後副甲状腺機能亢進症に対するPTx術前超音波検査の検討:大阪透析研究会会誌,第30巻1号,P23-27,2012