英文誌(2004-)
特別企画 甲状腺・副甲状腺
シンポジウム 甲状腺・副甲状腺1小児甲状腺結節の超音波診断
(S353)
伊藤病院における小児甲状腺検査の結果
Thyroid ultrasonography findings of children in Ito hospital
國井 葉, 岩久 建志
Yo KUNII, Kenji IWAKU
伊藤病院内科
Department of Internal Medicine, Ito Hospital
キーワード :
2011年の福島原発事故後,小児甲状腺癌に対する意識が高くなってきている.当院へも放射線の影響を心配して,お子さんを連れてくる方が増加している.いろいろな検査の面で大人と小児の正常はしばしば異なることがある.そのため大人の超音波所見の正常をそのまま小児当てはめることはできない.今回,自験例ではあるが小児甲状腺検査の特徴を明らかにして臨床診察の参考にできればと思う.
2003年1月から10年間当院で甲状腺超音波検査を施行した15歳以下の2721例(男性508例,女性2213例)の検討を報告する.当院は甲状腺専門病院であるため,健康診断と違い,病気を疑う何らかの理由があり受診する方がほとんどである.来院時主訴は,頻度の高い順に,「医師に甲状腺腫大を指摘されたため」25.8%,「甲状腺疾患を心配したため」16.3%,「甲状腺機能異常を疑う症状があったため」16.1%,「すでに診断がついて治療目的で紹介」15.6%であった.
血液検査の結果では,慢性甲状腺炎(17.5%),バセドウ病(16.2%),抗体陰性の甲状腺機能異常(1%),先天性甲状腺機能低下症(0.3%),機能性結節,化膿性甲状腺炎,抗体陰性の甲状腺機能正常(64.3%)であった.
超音波検査では,結節を認めない症例が1397例(51.3%)であった.1397例中結節は認めないが,びまん性甲状腺腫があるもの975例,甲状腺萎縮があるもの1例を認めた.また,結節を認めた症例の内,囊胞性疾患は1053例(38.7%),充実性結節は249例(9.2%)であった.充実性結節の中で悪性腫瘍と病理で診断された症例は35例(1.3%)で乳頭癌28例,濾胞癌6例,髄様癌1例であった.小児に特徴的とも言われる,迷入胸腺は18例(6.6%)に認めた.
小児における甲状腺超音波所見は,迷入胸腺など胎生期の遺残物と考えられる所見がある.所見に迷うものが存在しても経時的に観察すると消退するものある.しかし,消失しない所見は,悪性腫瘍をどの時点で見極めるか重要となる.今後も症例の蓄積と所見のある症例に対する経時的超音波変化を観察し病態を明らかにしていきたいと思う.