Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 甲状腺・副甲状腺
シンポジウム 甲状腺・副甲状腺1小児甲状腺結節の超音波診断

(S352)

小児の甲状腺癌と結節の自験例

Thyroid cancer and nodules in children

村上 司

Tsukasa MURAKAMI

野口病院内科

Department of Endocrinology, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation

キーワード :

【はじめに】
小児の甲状腺結節や甲状腺癌は稀であるが,小児では結節の中で癌の占める割合が成人に比べて高いと報告されている.自験例の超音波所見を含む臨床像について報告する.
【19歳以下の甲状腺癌症例】
2000-2013年に初回手術を受けた19歳以下の甲状腺癌症例は64例であった.術後の病理検査で偶然発見された17例を除く47例は女性40例,男性7例,年齢は9-19歳(中央値17歳),15歳以下が16例,16-19歳が31例.乳頭癌41例(びまん性硬化型乳頭癌4例を含む),濾胞癌3例,髄様癌3例であった.
【乳頭癌症例】
びまん性硬化型乳頭癌を除く37例の乳頭癌について超音波所見,細胞診所見,病理所見を検討した.腫瘍径は4-65mm(中央値18mm)であった.超音波検査では,形状不整,充実性はそれぞれ31例(83.8%),内部低エコーの所見は32例(86.5%)に認めた.境界部低エコー帯は全例認めず,高エコースポットは24例(64.9%)に認めた.超音波診断を悪性としたものは32例(86.5%)であった.超音波検査でリンパ節転移を疑った例は22例(59.5%)であったが,術後の病理検査では33例(89.2%)が転移陽性であった.細胞診は全例に施行され34例(91.9%)が悪性,1例(2.7%)が鑑別困難との診断であった.37例中6例は診断時に肺転移を伴っていた.びまん性硬化型乳頭癌4例は全例超音波検査,細胞診で乳頭癌と診断されていた.
【19歳以下の良性結節症例】
2008-2012年に受診し良性結節と診断された19歳以下の例は34例であった.女性28例,男性6例,年齢は12-19歳(中央値16歳),15歳以下が10例,16-19歳が24例.学校検診等で甲状腺腫を指摘され受診した例が12例,何らかの理由で医療機関を受診した際に偶然指摘された例が12例,前頸部腫脹を自覚した例,家族が気づいた例が各5例であった.最大結節径は7-71mm(中央値29mm).単発結節が22例,多発結節が12例.主たる結節については7例が充実性結節,13例が充実性優位,9例が嚢胞優位,5例が嚢胞性結節であった.全例に細胞診が施行され,超音波所見と細胞診に基づいて21例が腺腫様結節,9例が濾胞腺腫,4例が嚢胞と診断された.経過を追えた14例中6例で増大,不変4例,縮小4例であった.10例では手術が行われ病理診断は濾胞腺腫6例,腺腫様甲状腺腫4例であった.
【考察】
甲状腺外科研究会甲状腺悪性腫瘍登録集計によると19歳以下の例は甲状腺癌の1.6%を占めるに過ぎず,その82.8%は乳頭癌であった.小児甲状腺癌は頚部腫瘤や頚部リンパ節腫大を契機に診断されることが多く,成人に比べ腫瘍径が大きくリンパ節転移の頻度もより高いことが報告されている.診断時に遠隔転移のある頻度も高く術後のリンパ節再発の頻度も高いが,生命予後は一般に良好である.診断に超音波検査,細胞診が有用である点は成人と同じである.小児甲状腺癌の超音波所見を分析した報告では悪性を示す所見として内部低エコー,形状不整,血流増加,微細石灰化,リンパ節の異常所見が挙げられている.自験例でも19歳以下の甲状腺癌では乳頭癌が大部分を占めており,診断には超音波検査,細胞診が有用であった.