Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 乳腺
パネルディスカッション 乳腺2術前診断がDCISであった症例の検討—画像診断の特徴について

(S347)

非浸潤性乳管癌の術前術後における診断の相違に関連する因子の検討

Factors associated with presence of invasive carcinoma on surgical specimen in patients with preoperative diagnosis of ductal carcinoma

林 直輝1, 近藤 享史1, 大出 幸子2, 矢形 寛1, 吉田 敦1, 中村 清吾3, 角田 博子4, 山内 英子1

Naoki HAYASHI1, Takahfumi KONDO1, Sachiko OHDE2, Hiroshi YAGATA1, Atsushi YOSHIDA1, Seigo NAKAMURA3, Hiroko TSUNODA4, Hideko YAMAUCHI1

1聖路加国際病院乳腺外科, 2聖ルカライフサイエンス研究所臨床疫学センター, 3昭和大学医学部乳腺外科, 4聖路加国際病院放射線科

1Breast Surgical Oncology, St. Luke’s International Hospital, 2Center for Clinical Epidemiology, St. Luke’s Life Science Institute, 3Breast Surgical Oncology, Showa University School of Medicine, 4Radiology, St. Luke’s International Hospital

キーワード :

背景
センチネルリンパ節生検(Sentinel Node Biopsy; SNB)を行い,転移がなければ腋窩リンパ節郭清を省略することにより腋窩リンパ節郭清に伴う,上腕浮腫(30-60%)などの合併症を劇的に下げる事ができるようになったが,SNBでも上腕浮腫(2-6.9%)などの合併症は依然として認めるため,不要なSNBの施行は控えたい.非浸潤性乳管癌(Ductal Carcinoma in Situ; DCIS)は原則リンパ節転移を起こさないために,センチネルリンパ節生検の施行の必要はないはずであるが,術前針生検によってDCISと診断されても,このうち8-38%が手術検体による最終病理診断で浸潤性乳管癌(Invasive Ductal Carcinoma; IDC)となるため,DCISに対しても多くの例でSNBを行う.しかし,結果として術後診断もDCISの診断となり,SNBが不要であった症例も多い.このため,DCISに対するSNBの適応基準の構築は,合併症,患者の心理的及び身体的負担,及び,医療経済または医療従事者の負担軽減,と多くの点でその意義は大きい.本研究の目的は,術前針生検でDCISの診断でも術後標本でIDCと診断されることの変化に関連する臨床病理学的因子を検討する事である.
方法
2003年から2013年に術前針生検ないしマンモトーム生検によってDCISと診断後に,外科的切除を施行された患者を対象とした後ろ向きコホート研究をおこなった.術前化学療法を施行された患者は除外した.統計解析には,ロジスティック回帰分析を用い,術前後の診断の変化に関わる因子を評価した.
結果
術前病理診断でDCISと診断された患者1251例を対象とした.そのうち933例(74.5%)が術後病理診断でDCISと診断され,318例(35.5%)がIDCとなった.多変量解析により,術前病理所見で硬化性腺症を認めないこと(OR 0.458,95%CI 0.246-0.850,p=0.013)は,術後診断がDCISのままであること,一方,MMGで多型性石灰化を認める事(OR 1.680,95%CI 1.141-2.474,p=0.009),超音波で腫瘍最大径≧2cm(OR 1.795,95%CI 1.053-3.058,p=0.032),超音波またはMRIで浸潤を疑う所見を認める事(OR 2.129,95%CI 1.513-2.995,p=0.000)が,術後IDCの診断へ変化することに関連する独立した因子であった.またHER2陽性(OR 1.537,95%CI 0.979-2.413,p=0.062),comedo necrosisを認める事(OR 1.418,95%CI 0.991-2.028,P=0.056)も同様の傾向を認めた.
結語
術前針生検でDCISと診断されても,硬化性腺症の所見がある場合には術後診断もDCISである可能性が高いが,MMG上での多型性石灰化,腫瘍径≧2cm,画像上浸潤を疑う所見,CNB検体でHER2陽性,comedo壊死を認める場合は,術後診断でIDCである可能性を考慮し,現時点ではSNBの省略は推奨できない.今後,これらの因子を用いた予測モデルを構築し,臨床的有用性の検討を行う.