Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 乳腺
パネルディスカッション 乳腺1乳腺領域における造影超音波の臨床応用の実際

(S343)

検査室における乳腺造影超音波検査のマネジメント

Management of breast contrast-enhanced ultrasonography in the examination room

桑山 真紀

Maki KUWAYAMA

医療法人豊田会刈谷豊田総合病院放射線技術科

Radiation Technology Department, TOYOTA-KAI Medical Corporation KARIYA TOYOTA General Hospital

キーワード :

【はじめに】
乳腺造影超音波検査の有用性は①良悪性の鑑別診断②広がり診断③薬物療法の効果判定などと報告されており乳腺診療に直結する.乳房画像診断の中でScreenig-USは超音波検査技師が施行することも少なくはないが,造影超音波検査は超音波の最大の特徴であるリアルタイム性が発揮されるため,医師不在の環境での運用は是非が問われるところである.技師が施行する使命は医師に代わって病態を「観る」のではなく「診る」に繋げることである.当院乳腺検査室では,平成25年9月より悪性の腫瘤性病変に対する造影超音波検査を開始し,12月末で37乳房を経験した.医師不在の環境下の運用と結果を報告しマネジメントを含めた乳腺造影超音波検査について述べる.
【検査の流れ】
現在の運用は乳房撮影,単純超音波検査施行後,病理診断にて悪性が確定した症例に対して,造影MRI検査と同一日に行っている.基本の観察断面は主病変と乳頭を結ぶ面とし,造影開始50秒までのDynamic-Imageを撮像後,積算画像,スイープスキャンを行う.特徴的な断面があれば,変更あるいは,Re-injection時に撮像する.複数の技師が担当するため,造影スケジュールは必須ではあるが,長い造影持続時間の特徴を活かして,あらゆる方向から観察することが最も重要である.
【造影剤副作用に対する対応】
ソナゾイドはCTやMRIの造影剤と比較し副作用は報告の上では軽微であり,安全性の高い薬剤ではあるが,重篤な副作用が起こらないという確約はない.オーダー発行時に使用する検査説明書の作成や,卵アレルギー患者に対してはオーダーできないシステムを構築している.また,担当技師と造影担当看護師による「副作用急変対応トレーニング」を随時開催し想定される事態に備えている.
【濃染の評価と提出画像】
リアルタイム性のある超音波画像を静止画で保存し提供するには,選択画像に一定のルールが必要である.次に述べる手順で濃染の評価を行い,報告書とともに提供している.
(1)造影パターン:病変部において不均一な濃染や造影欠損が認められる場合,ROIを①濃染されている領域で最も高輝度に観察される領域,②病変全体,③流入血管を外した正常乳腺に設定,時間輝度曲線(TIC)を作成しMRIに準じた方法で評価.
(2)濃染の程度:TICで作成した①高輝度に濃染されている部分のピーク時の輝度値と③正常乳腺の輝度値を比較.
(3)濃染域:ピーク時における病変のBモード画像と濃染域の比較で評価.ダブルスケールの使用で評価されることもあるが,背景の乳腺を組み合わせた画像での評価は簡便である.
造影開始時,造影ピーク時,開始-ピーク時間,wash-out時(plateauであれば一定の時間が経過した時点)の画像,血管構築を反映した積算画像およびTICの提出は必須としている.静止画での提出の限界も感じており,動画の配信も検討している.
【結果】
濃染の程度は正常乳腺と比較して強く濃染と評価したものは約8割であった.濃染の範囲を病変に対して小さいと評価したものはなく,明らかに広いと評価したものは約3割であった.均質性は欠損ありと評価したものが約1割,不均一な濃染が約7割であった.
【今後の展望】
第Ⅲ相臨床試験で造影超音波検査は造影MRI検査と比較し良好な結果が得られてはいるが,最大の欠点は視野が制限されることである.したがってMRI-detected lesionに対して造影超音波で検証することで,副病変の良悪性診断や詳細な進展範囲の確認に繋がると考えている.今後は造影MRI検査後の造影超音波検査の施行でさらに多くの情報を提供し,乳癌治療に貢献する体制を構築したい.