Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 産婦人科
シンポジウム 産婦人科2胎児超音波検査:胎児はどこまでチェックすべきか

(S334)

教育

Education

早田 桂

Kei HAYATA

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科産科婦人科学教室

Departments of Obstetrics and Gynecology, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Science

キーワード :

現在産婦人科医療施設において超音波診断装置なしでの診療は不可能であり,全ての産婦人科医が日常診療で使用し,超音波診断している.
超音波自体はプローブを経腟的あるいは経腹的に当てさえすればまずまずの画像が得られ,胎児を見ることに限れば特別な教育を要さない.そのため,特別な教育を受けていなくても日常診療での使用は可能であり,それほど不便なく使用している医師も少なくない.
しかし,超音波診断装置技術の進歩と診断精度の飛躍的な向上により,見えないものが見えるように,分からなかったものが分かるように,出来ないことが出来るように超音波診断は進歩している.そのため,同じ症例,同じ画像でも胎児を見るだけに留まる医師と,胎児を診て正確な情報を患者(妊婦)に与えることが可能な医師との差に隔たりがある.
超音波診断においては多くの施設が特別な教育システムを持たないで先輩医師から教わっているのが現状であり,十分な教育がなされているとは言い難い.産婦人科超音波教育は学会あるいは学会以外が主催する超音波セミナーへの参加がある.日本産婦人科学会,日本超音波医学会,日本母体胎児医学会等が産婦人科超音波教育に関与しており,学会誌で超音波診断に関する内容を取り上げることで教育の一端を担ったり,超音波セミナーを開催し,受講することによって産婦人科超音波レベルの向上が期待されている.昨今,胎児超音波と名の付くセッションやセミナーは多くの若手産婦人科医で賑わっている.産婦人科超音波は日常診療としての超音波検査,スクリーニングとしての超音波検査,診断を目的とした精査としての超音波検査に大別されるが,超音波セミナーでは,それらを一通り網羅するようなカリキュラムで開催され,さらには胎児心臓のように各臓器に特化したセミナーも開催されているように,超音波診断は医師のキャリアや勤務施設で,診断への目標到達度が本来変化するものではない.
しかし,特別な教育カリキュラムをもたない研修施設では,推定体重計測や血流計測など最低限の検査項目を先輩医師に数回教育されたのみで,それ以後は独り立ちを求められるためか,ズーム機能やゲイン調整,胎向や臓器の位置関係などを考えないまま我流となっている超音波画像写真を目の当たりにする機会がある.
結論を言えば,産婦人科後期研修の開始から半年間程度のうちに,妊娠20週前後で行われるような胎児形態異常スクリーニングの技術は取得すべきであり,教育により上記のスクリーニング程度の熟練は可能と考える.技術取得が遅れるほど,胎児脳や胎児心臓の超音波が苦手と答える産婦人科医が増える傾向にある.
岡山大学病院では妊娠20週と26週前後の2回に通常の妊婦健診とは別に胎児超音波スクリーニング外来を設けている.常時後期研修医を1名配置し,超音波の指導を行うことで,例えば心臓では4 chamber viewや3 vessel view,左右流出路の描出は,産婦人科に入局してわずか1〜2ヶ月の後期研修医でさえも,推定体重計測と同じような位置づけとして,条件が良ければ綺麗な画像として描出できており,胎児心臓を診ることが特別なことではないものとして意識づけられていると思われる.
また日本超音波医学会が設けている超音波専門医制度は,超音波診断の基礎と,専門領域の臨床に関する試験を受けて合格する必要があり,相当量の学習が必要であるため,教育の面では踏み込んだものとなっている.しかし,目に見える形で超音波専門医としての実益がないため,若手産婦人科医師が目指すようなサブスペシャリティ資格となる工夫が望まれる.