Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 産婦人科
シンポジウム 産婦人科1出生前遺伝学的検査と超音波検査

(S329)

出生前遺伝学的検査の将来像

Future images of non-invasive prenatal genetic tests

三浦 清徳, 増﨑 英明

Kiyonori MIURA, Hideaki MASUZAKI

長崎大学医学部産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Nagasaki University School of Medicine

キーワード :

遺伝子解析技術の進歩とともに,近い将来には,母体血による胎児DNA診断の対象が,染色体疾患から遺伝子疾患にまで拡大していくことが予想される.現時点では,母体血を用いた胎児遺伝子診断は,いずれも研究レベルであるが,1)胎児性別診断,2)胎児RhD型診断,および3)父親由来もしくは特発性のメンデル遺伝子異常症の診断については,確定診断として臨床応用されつつある.一方,母親由来のメンデル遺伝子異常症の診断については,遺伝子解析技術の進歩とDNA抽出法の工夫により,母体血による胎児DNA診断で罹患児であるのか否かのリスクを推定しうるレベルに到達できる可能性がある.
母体血による胎児DNA診断は非侵襲的検査であり,従来の侵襲的検査と比較して,妊婦は比較的安易にDNA検査を受ける傾向にあるかもしれない.胎児の性別診断は妊娠7週頃から可能であるが,児の性別の選択などに利用される危険性を認識して,その対象は,X連鎖性遺伝子異常症や副腎皮質過形成症に限るべきという意見もある.また,母体血による胎児DNA診断のメンデル遺伝子異常症への応用については,遺伝子異常の由来(父親由来,母親由来あるいは特発性)や遺伝形式(常染色体優性遺伝,常染色体劣性遺伝あるいはX連鎖性遺伝)により,確定診断として応用可能なものと,リスクを推定する非確定的検査として応用されるものとに分類される可能性がある.遺伝形式や遺伝子異常の由来を明らかにするには,従来の胎児DNA診断と同様に,家系図の聴取など臨床遺伝学的診察は必須である.また,母体血による胎児DNA診断の遺伝カウンセリングでは,妊婦が出生前診断に求めるものは何なのか,よく話を聞くことが大切であり,妊婦に本検査の意義と未だ研究レベルであることを理解させることが重要であることは将来も変わりないことである.
今回は,母体血漿中DNAを用いた出生前遺伝学的検査に関する研究の進捗状況をもとに,将来の本検査の臨床応用の可能性について概説する.