Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
ワークショップ 消化器1肝癌治療支援としての超音波技術

(S322)

肝癌治療支援システムとしてのVirtuTRAXの有用性と問題点

Utility and problems of the VirtuTRAX for RFA supporting system

田中 弘教1, 2, 池田 直人2, 高嶋 智之2, 岩田 一也2, 由利 幸久2, 楊 和典2, 石井 昭生2, 會澤 信弘2, 西口 修平1, 飯島 尋子1, 2

Hironori TANAKA1, 2, Naoto IKEDA2, Tomoyuki TAKASHIMA2, Kazunari IWATA2, Yukihisa YURI2, Kazunori YOH2, Akio ISHII2, Nobuhiro AIZAWA2, Shuhei NISHIGUCHI1, Hiroko IIJIMA1, 2

1兵庫医科大学超音波センター, 2兵庫医科大学肝胆膵科

1Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine, 2Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【背景と目的】
2012年8月よりBモード画面上に仮想針を表示する針ナビゲーションシステムVirtuTRAX(GE Healthcare, USA)が本邦でも使用可能となった.このシステムは専用の取り付け器具であるブラケットで位置センサを目的のラジオ波穿刺針と固定することで,現在使用されているすべてのRadiofrequency ablation(RFA)システムに対応する.このシステムでは固定された穿刺角度のみでなく,任意の角度での穿刺サポートも可能となる.またRFA治療時に,バブルによるアーチファクトで針先端位置の確認困難となる問題点があるが,国内で頻用されている単針のCooltip針で25mm以上の結節に十分な安全域を確保するためにはバブルの影響下での追加焼灼が必要となる.RITAなどの展開型針では,展開後の焼灼時は針先端が不明瞭となりやすく,治療開始後の正確な焼灼範囲推定が困難となる.Bモードの精度が低下する深部方向では,焼灼前であっても針位置の確認がしばしば困難であるため,深部の針先端位置把握が容易となることで治療精度の向上も期待できる.しかし位置センサは針先端でなく,針根部付近に固定するので,穿刺針先端の「たわみ」による仮想表示針の位置変位がおこりやすい.そこで今回我々は,VirtuTRAX併用RFAを施行した症例の有用性と問題点を検討した.
【方法】
2012年9月から2013年10月に当院で149症例195結節のうちVirtu TRAXを使用してRFA施行した41例(男性28例,女性13例)を対象とした.使用した穿刺針はCool-tip針30症例,RITA展開針11症例であった.装置はGE社製Logiq E9を使用した.26例は短縮クリップ法で治療を行ったが,短縮クリップ法(2013年肝臓291-3)は,体表面から目標位置までの距離に穿刺アタッチメントを加えた先端からの距離に,ブラケットを装着して穿刺を行い,穿刺後も可能な限り体表にブラケットを近づけ固定するものとした.
【結果】
RITA展開針では針のたわみによる穿刺表示針の位置ずれは比較的少なかったが,Cooltip針では穿刺針の剛性が弱いため,表示位置が変位しやすく,当初,安定した穿刺や位置確認が困難であった.しかし,これらは2012年11月より導入した短縮クリップ法により,全例で仮想表示針の変位が小さくなり,特に穿刺後の針先端表示位置の安定化に有用であった.またVirthTRAXは,追加穿刺中の針先の追跡補助や,複数本の針を穿刺する際の位置把握にも有用であった.短縮クリップ法は,RFA穿刺針は先端からの距離が刻印されていることより,容易に距離を読み取ることが可能であり,センサ位置の変更も簡便であった.しかしディスポーザルキットが高額(16000円/症例)である点や,使用機器が限定されるなどの問題もあった.
【結語】
客観的で正確なラジオ波治療を可能とするVirtuTRAXは,仮想表示針の位置ずれの可能性を十分に把握して使用する必要はあるが,医療安全の点からも更に普及が促進することが期待される超音波技術である.