Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
パネルディスカッション 消化器2膵疾患診断における体外式超音波検査vs.超音波内視鏡検査

(S318)

膵癌高危険群における膵精密超音波検査を用いた経過観察の有用性

The usefulness of periodic follow up using careful ultrasonography focusing on the pancreas for high risk group of pancreatic cancer

福田 順子1, 蘆田 玲子1, 仲尾 美穂1, 岡垣 すえつみ1, 石田 伸子1, 吉岡 二三1, 高倉 玲奈2, 井岡 達也1, 田中 幸子3, 片山 和宏1

Junko FUKUDA1, Reiko ASHIDA1, Miho NAKAO1, Suetsumi OKAGAKI1, Nobuko ISHIDA1, Fumi YOSHIOKA1, Rena TAKAKURA2, Tatsuya IOKA1, Sachiko TANAKA3, Kazuhiro KATAYAMA1

1大阪府立病院機構大阪府立成人病センター検診部, 2大阪がん循環器病予防センター内視鏡検診部, 3大阪がん循環器病予防センター所長

1Dept.Cancer Survey, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases, 2Department of Endoscopy, Osaka Center for Cancer and Cardiovascular Disease Prevention, 3Director, Osaka Center for Cancer and Cardiovascular Disease Prevention

キーワード :

【はじめに】
体外式超音波検査(US)は膵腫瘍の画像診断の中で最も非侵襲的な検査である.一方,膵病変の検出率はEUSに比べ消化管ガスや被検者の体型などに影響される.当院ではUSの長所,限界を理解し,膵の描出範囲を広くする工夫をした膵精密超音波検査(以下膵精密US)を膵のう胞あるいは主膵管拡張を有する膵癌高危険群の経過観察に積極的に活用している.
【目的】
膵癌高危険群の経過観察における膵精密USでの膵癌発見率を明らかにし,膵精密US用いた経過観察の有用性を検討する.
【対象と方法】
当院では,1998年より膵のう胞あるいは主膵管拡張を有した症例の登録を行い,半座位,胃充満法,体位変換を組み入れた膵胆道系に特化した膵精密USを中心とした膵癌早期発見のための定期検査を行っている.3-6ヶ月毎の膵精密USのみで定期検査を行った1998年5月から2007年6月までを第1期,また6ヶ月毎の膵精密US+年に1回のMRI(不可症例にはCT)を用いて定期検査を行い,膵精密USでの描出不良症例を除くなど登録基準を見直し,超音波装置の画質の向上も伴った2007年7月から2013年3月までを第2期とし,第1期と第2期での経過観察中の発見癌における膵精密USでの診断率,所見について検討した.
【成績】
第1期(1998年5月-2007年6月)に766例が登録され,この観察期間に16例の膵癌が発症した(男:女=10:6,年齢52-84歳平均71.9歳).内訳は通常型膵癌が10例,膵管内乳頭粘液産生腫瘍(IPMN)由来癌(IPMC)が6例であった.診断契機は膵精密US13例,血液検査2例,MRI検査1例.膵精密USが診断契機となった13例中低エコー腫瘤の出現が10例(径11-24mm平均17.0mm),のう胞内結節1例,主膵管拡張増悪が2例であった.膵癌16例中stage0が4例,Ⅰ1例,Ⅲ4例,Ⅳa 6例,Ⅳb 1例であった.stage0・Ⅰ計5例の診断契機は全てがUSであった.一方,USが診断契機となった13例中5例(38%)がstage0・Ⅰ,残り8例(62%)中stageⅢ3例,Ⅳa 4例,Ⅳb 1例であった.US以外が診断契機となった3例の部位は頭部,体部,尾部の各1例で頭部の1例は同部位に多房性嚢胞が存在した.体部,尾部の症例は,膵精密USをもってしても同部位の描出が不良であった.一方,第2期(2007年7月-2013年5月)では,第1期から継続355例と新規登録した270例の計625例が登録され,この間に16例の膵癌が発症した(男性:女性=8:8,年齢61-79歳平均69.1歳).内訳は通常型膵癌9例,IPMN由来癌7例であった.診断契機は膵精密US10例,血液検査1例,MRI検査1例,CT検査1例,自覚症状2例,他所見に対する精査目的のEUS1例.膵精密USが診断契機となった10例中低エコー腫瘤の出現6例(径5-17mm平均9.5mm),のう胞径増大または結節3例,主膵管拡張増悪が1例であった.膵癌16例中stage0が7例,Ⅰ4例,Ⅲ2例,Ⅳa 2例,Ⅳb 1例.stage0・Ⅰ計11例中9例(82%)の診断契機がUSであった.一方,USが診断契機となった10例中9例(90%)がstage0・Ⅰ,残り1例(10%)はstageⅢであった.US以外が診断契機となった6例の部位は鉤部3例,頭部2例,尾部1例で,頭部の2例は上皮内病変であった.鉤部の3例は膵のう胞に隣接した部位に発生した腫瘤,尾部の1例はMRIで尾部腫大が診断契機となったが,膵精密USでは同部位の描出が不良であった.第1期と第2期のUSが診断契機となった膵癌の中で,stage0・Ⅰの占める割合が多かった.
【考察】
第1期に比べ第2期では描出不良症例を除くなどの登録基準の見直しや超音波装置の画質の向上によって,膵精密USが診断契機となって早い段階で膵癌が見つかる症例が多かった.膵精密USで膵の描出が十分にできる膵癌高危険群の症例においては,膵精密USを用いた経過観察が可能であると考えた.