Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
パネルディスカッション 消化器1肝Elastographyに影響を与える因子

(S315)

Shear waveの伝搬速度に影響する肝臓の病理学的要因は?

Relationship between liver tissue viscoelasticity and histopathological findings analyzed by SWE and digital morphometry in patients with HCC

杉本 勝俊1, 本定 三季1, 大城 久2, 森安 史典1

Katsutoshi SUGIMOTO1, Mitsuyoshi HONJO1, Hisashi OSHIRO2, Fuminori MORIYASU1

1東京医大消化器内科, 2東京医大病理学教室

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University, 2Department of Pathology, Tokyo Medical University

キーワード :

【背景・目的】
ShearWave Elastography(SWE)は,外部からの圧迫を必要とせず,組織弾性を定量的にリアルタイムで測定・表示できる技術である.しかし,その測定値には様々な要素が関与していると考えられており,その解釈には注意が必要である.本研究は,どのような肝臓の病理学的要因がshear waveの伝搬速度に影響を及ぼすか検討した.
【方法】
対象は当施設で肝切除術を行った肝癌患者7名である.超音波診断装置はSupersonic Imagine社製Aixplorerを使用した.SWEは術中,開腹下に肝癌と背景肝実質を含む領域に対し行った.組織弾性の測定は,計48個の円形の関心領域(ROI)を(直径3〜8 mm)の肝癌領域(n=37)と,それに隣接する背景肝実質領域(n=11)にそれぞれ設置し,組織弾性を計測した.摘出した肝臓は,可能な限り超音波と同一断面で切り出を行った.48個のROIに対応するすべての組織画像は,デジタル顕微鏡画像に変換し,組織学的パラメータとして核領域,脂肪領域,線維化領域,および血管領域のROI内における割合を専用の解析装置を用いて定量的に測定した.SWEの組織弾性と組織学的パラメータとの関係は,混合効果モデルを用いて解析した.
【成績】
単変量解析では,膠原線維の領域(P=0.039),線維化(膠原+弾性線維)の領域(P=0.045),および肝細胞核の領域(P=0.045)の割合がSWEの組織弾性と有意に相関していた.多変量解析では,膠原線維の領域の割合が最も強くSWEの組織弾性と相関しており(P=0.008),肝細胞核の領域の割合も,有意にSWEの組織弾性と相関していた(P=0.049).
【結論】
膠原線維は,予想通りshare waveの伝搬速度に最も影響する組織因子であった.一方,肝細胞密度(すなわち,肝細胞核の領域の割合)もSWEの伝搬速度に影響する組織因子であった.SWEによる肝組織弾性の定量化は,慢性肝疾患および肝癌の進行の有用なバイオマーカーとなる可能性がある.