Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
パネルディスカッション 消化器1肝Elastographyに影響を与える因子

(S314)

Shear Wavesと共振する因子の検討

Examination for the factors that correlate to Shear Waves

青木 智子1, 2, 西口 修平2, 飯島 尋子1, 2

Tomoko AOKI1, 2, Shuhei NISHIGUCHI2, Hiroko IIJIMA1, 2

1兵庫医科大学超音波センター, 2兵庫医科大学内科肝胆膵科

1Ultrasound Imaging Center, Hyogo Callege of Medicine, 2Department of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Hyogo Callege of Medicine

キーワード :

【目的】
非侵襲的線維化診断として様々な機器が登場した.開発段階から粘性や臓器内圧の影響を受ける可能性が示唆されているが,剪断弾性波速度(Vs)と区別することは困難で,正確な線維化診断の障害となっている.Vsに影響を与える因子を明らかとし,正しい理解を持って線維化診断を行えることを目的とした.
【方法】
2008年10月〜2013年7月にVTQを測定した慢性肝疾患8783例を対象とした.
(1)ファントム実験により,VTQ(Siemens ACUSON S2000)を用いてVsを測定し,測定誤差に関する検討を行った.ファントムでは,3つの硬さの異なる球内(柔からい順にA,B,C)の中央点・上方2mm,下方2mm,左方2mm,右方2mmの5カ所を3回ずつ計15回測定した.溶媒(D)もコントロールとしてVsを測定した.
(2)慢性C型肝炎・下部胆管癌を合併した閉塞性黄疸の1例(60代女性,BMI16)でVTQを測定し,減黄術前後で肝臓の硬さが変化するかを検討した.
(3)肝生検の前後4ヶ月以内にVTQを測定した1061例を用いてVTQに相関する因子を多変量解析で検討した.
【成績】
(1)VTQの4C1プローブを用いた検討では,A:1.56±0.10m/s(IQR0.15),B:2.53±0.06m/s(IQR0.06),C:3.33±0.07m/s(IQR0.06)であり,いずれも球の中央点ではVsは安定したが,球の中央を外れるとVsの変動は大きくなった.Dは2.97±0.08m/s(IQR0.08)で,プローブを機械で固定すると値は安定したが,徒手的圧迫では変動が大きくなった.
(2)当院初診時,T-bil9.0mg/dlと肝内胆管の拡張を伴う閉塞性黄疸を認め,VTQ2.48m/s,Fibroscan46.4kPaと高値を示した.3病日にENBDを留置し,14病日にはT-bil1.7mg/dlまで低下したが,この際のVTQ2.26m/s,Fibroscan20.6kPaと改善を示した.当症例はこの後,PPPDを受け退院した.
(3)重回帰分析の結果,VTQと最も強い正の相関関係を示す因子はF因子であり(標準化偏回帰係数β0.333),他にもA因子(β0.085),Plt(β-0.181),ヒアルロン酸(β0.175),BMI(β0.151),T-bil(β0.109),γGTP(β0.060),Etiology(β0.056)が有意な相関関係を示した(p<0.05).線維化や炎症に比例して肝臓は硬くなり,他にも肥満や黄疸,γGTP高値が肝臓の硬さに影響した.F3-4ではHBVで有意に肝臓が柔らかいことが示され(P<0.001),再生結節の大きさが硬さに影響する可能性が示唆された.一方で肝脂肪化や年齢,耐糖能障害,AFP値などは肝臓の硬さに影響を与えなかった.
【考察】
VTQは測定者の圧迫不良・被験者の呼吸性変動などがなければ極めて安定的にVsを測定できることが明らかとなった.また,腫瘍内部のVsを測定する場合は中央点を狙って測定する必要がある.我々は過去の検討で,皮下脂肪2cm以上の肥満,ALT>200以上の高度な肝炎症,AIH/PBCなどで測定値のばらつく症例では病理学的線維化診断とVTQが乖離することを報告してきた.多変量解析で,BMIに比例してVsが上昇する結果が得られたが,多重反射などのアーチファクトによるものがないか更なる検討が必要である.
また,閉塞性黄疸の症例は減黄術によりVsが低下した.多変量解析ではT-bil・γGTPがVTQと有意に相関する因子であることが示され,肝臓内圧や粘性がVsに一定の影響を及ぼす可能性が示唆された.
【結語】
VTQは線維化と最も強い正の相関を示し,それ以外にも炎症,黄疸の影響を受けていた.肥満症例でVTQが高くなる傾向があるが,肝脂肪化はVTQに有意な影響を与えなかった.