Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
パネルディスカッション 消化器1肝Elastographyに影響を与える因子

(S312)

FibroScanにより測定された肝硬度値に対する肝内炎症の影響

A retrospective analysis of the relationship between the intrahepatic inflammation and liver stiffness quantified by FibroScan

米門 秀行, 木村 達, 大﨑 往夫

Hideyuki KOMEKADO, Toru KIMURA, Yukio OSAKI

大阪赤十字病院消化器内科

Gastroenterology and Hepatology, Osaka Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
肝線維化の評価方法として,従来の肝生検による病理学的な評価方法に加え,非侵襲的な肝線維化評価法の有用性が広く報告され,急速に普及している.FibroScanは肝表面に加えたShear waveによる肝組織の振動を超音波で追跡し,その伝搬速度から肝硬度を定量的に推測するmodalityであるが,Shear waveを用いた肝硬度測定法は,肝線維化の他,炎症,黄疸,うっ血による影響を受けるため解釈に注意を要すると報告されている.今回,FibroScanで算出された肝硬度値に対する炎症の影響を後方視的に解析した.
【対象・方法】
当院においてFibroScanにより肝硬度を定量的に評価を行い,かつ肝生検にて肝線維化を評価,もしくは食道静脈瘤の存在により臨床的に肝硬変(F4)と診断した,慢性肝疾患患者113名(男:女= 51:62,年齢分布27-82才(中央値59才))を対象とした.肝硬度は,M probeにより10回測定した内の中央値(ヤング率,kPa)で表示した.
【結果】
今回の測定結果より,各線維化ステージの肝硬度を,中央値(第1四分位-第3四分位)で以下の通り算出した.F0: 5.25(4.33-6.50),F1: 6.20(5.25-7.10),F2: 9.65(7.03-11.4),F3: 10.4(8.23-16.5),F4: 19.3(11.6-31.7).次に,このコホートのなかで,FibroScan施行時の血清ASTもしくはALT活性が100 IU/ml以上の,炎症が高いと考えられる患者群を抽出した(n = 22).それぞれの肝線維化ステージにおける肝硬度値と比較したところ,<第1四分位:第1四分位-第3四分位:>第3四分位の割合は3:15:4であり,四分位範囲(IQR)を超える肝硬度値を示した例は多くなかった.次に,急性肝炎(3例)の解析では,T-bilが10 mg/dlを超える2例では肝硬度の著明な上昇(22.3および38.0 kPa)を認めたが,黄疸を伴わない1例では,AST/ALT活性の高度上昇にも関わらず肝硬度値は8.0 kPaと軽度の上昇にとどまった.また,心不全によるうっ血肝例では69.1 kPaと著明に上昇していた.
【結論】
今回の解析より,肝内の炎症は肝硬度値を上昇させる十分条件ではないと考えられ,肝炎による肝硬度値の上昇は,黄疸,うっ血,類洞内の血流障害など,生理学的な機能障害をより反映している可能性が考えられた.肝癌に対する肝動脈化学塞栓術(TACE)前後の肝硬度値の変化もふまえて考察を行いたい.