Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
シンポジウム 消化器4消化管超音波診断の進歩

(S310)

腸閉塞の超音波診断

Ultrasonographic diagnosis of intestinal obstruction

眞部 紀明1, 畠 二郎1, 河合 良介1, 今村 祐志1, 春間 賢2

Noriaki MANABE1, Jiro HATA1, Ryosuke KAWAI1, Hiroshi IMAMURA1, Ken HARUMA2

1川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 2川崎医科大学消化管内科学

1Division of Endoscopy and Ultrasonography, Department of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 2Division of Gastroenterology, Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【緒言】
腸閉塞は急性腹症をきたす消化管疾患の中でも,遭遇することの多い重要な病態である.腸閉塞の原因は多岐にわたるが,中には迅速な外科的処置を必要とする疾患も含まれるため,超音波検査(US)では単に腸管の病的拡張を指摘するだけでなく,閉塞部位を明らかにし,絞扼の有無など治療方針につながる所見を検討する必要がある.本主題では,腸閉塞の診断におけるUSの有用性に関して,症例を提示しながら議論する.
【非造影下のUS診断】
個々の状況によっても異なるが,食直後や経口腸管洗浄剤を飲用していない限り,小腸内に多量の液体貯留が描出されることは少なく,腸閉塞を疑う契機となる.次に,拡張腸管を丁寧に追跡し虚脱した腸管に移行する閉塞部位を同定すると伴に,拡張腸管の蠕動運動や腸管内容物の移動性の有無を確認することが重要である.このリアルタイムの腸管の観察はUSでしか認識のできない重要な所見と考えられる.一方,単純性腸閉塞の多くは癒着に伴うものであるが,小児や腸管腫瘍を有する症例では腸重積による閉塞をきたすことがあり注意を要する.また,閉塞部位がなく,腸管蠕動の低下による麻痺性腸閉塞を疑う場合には周囲の炎症所見の有無を確認する必要がある.当院の腸閉塞症例のうち確定診断の得られた症例に対するUSの検出能の検討では,概ね90%台後半であり,優れた診断法と考えられる.
【造影US診断】
造影USは消化管壁内の微細血流をリアルタイムに評価できることから,絞扼性腸閉塞における腸管の循環障害の判定に臨床応用可能と考えられる.我々の施設における造影USを用いた消化管虚血の検出能は,感度100%,特異度98%と良好な成績を得ている.特に,腸管虚血が疑われる患者の場合,全身状態が悪い事も多く,造影USはベットサイドで行える点でも臨床的意義が大きい.また,腸管虚血が疑われる患者の中には腎障害あるいはアレルギー等で造影CTが使用できない患者も存在するため,造影USの果たす役割は大きいと考えられる.ただし絞扼の発症早期には腸管壁は造影されるため,造影剤の流れをリアルタイムに観察し静脈の鬱滞を評価する必要がある.なお,消化管に対する超音波造影剤の使用は保険適応外であり,院内の倫理委員会の承認および患者からのinformed consentを得て検査を施行している.
【USとCTとの比較】
腸閉塞の診断において,CTもUSも消化管壁及び壁外に関する有用な情報を与えてくれるといった点は同様である.しかしながら,CTは再現性,客観性には優れるが,経時的な変化を簡単には観察できないという短所がある.発症早期には単純性腸閉塞であったものが,経過中に絞扼性腸閉塞に進展する症例もあるため,リアルタイムにかつ繰り返し検査が可能であるUSは有用と考えられる.
【結語】
USは他のモダリティーと比較し,リアルタイムな観察が可能な非侵襲的検査法であり,必要に応じて反復して施行できるという利点を有する.更に血流動態の把握も可能であることから,腸閉塞の原因および病態の変化の把握,合併症の早期発見が可能であり,臨床上有用な検査法と考えられる.