Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
シンポジウム 消化器4消化管超音波診断の進歩

(S308)

虫垂炎の超音波診断

Ultrasonic diagnosis of appendicitis

﨑田 靖人1, 2, 谷村 勝宏3

Yasuhito SAKITA1, 2, Katsuhiro TANIMURA3

1福岡メディカルサポート代表, 2河畔病院検査科, 3メディテックアシスト代表

1representative, Fukuoka Medical Support, 2Pathology, Kahan Hospital, 3representative, Medi-tech ASSIST

キーワード :

近年画像診断の進歩により消化管の超音波検査が頻繁に行われるようになってきた.特に診断装置の進歩はめざましくさらなる画質向上をもたらしている.急性虫垂炎の超音波診断に関しては病期の診断,手術適応から経過観察まで多岐にわたる.また,右下腹部痛患者における疾患の鑑別の際には虫垂の描出が重要であると考える.正常虫垂の描出であるが,これには従来の3.5MHzのプローブに加え高周波のプローブの併用が必須となる.この高周波プローブの進歩が虫垂の画像診断の進歩と直結していると考えている.単に高周波のものだけではなく,ティッシュハーモニックはもちろん様々なアプリケーションや画像調整により鮮明である程度の深部まで描出可能となってきた.これに回盲部の解剖に即した系統的な走査方法を加えることにより虫垂の描出能は格段に上昇する.場当たり的に腫大した虫垂のみを探すやり方では描出率や診断能に限界があると考える.ここで私が数年前に検討した結果を報告する.平成22年の1年間に右下腹部痛でUS施行した375例で検討した.そのうち132例(35.2%)が急性虫垂炎,超音波での診断は127例(96.2%)であった.また,同375例中,虫垂に関して記載のなかった34例を除外すると虫垂描出不能例は57例(16%)であった.その内CT等で虫垂炎であったのは5例であった.描出不能例の原因は肥満でペネトレーションがとれない,回盲部が骨盤腔に存在し解剖のオリエンテーションが付かない等であった.虫垂炎の病期診断には虫垂の短軸径,壁の状態や周囲の変化を加えることにより,カタル性,蜂窩織炎性,壊疽性,穿孔まで診断できるようになっている.特に層構造の描出が重要であり,さらに全体像の把握,特に先端まできちんと評価することが重要となる.しかし前述したように虫垂炎症例でも5%程度は描出不能例が存在する.この場合にCTを行い,さらに得られたデータをもとにCTナビゲーション下で超音波検査を再施行することにより従来では描出不良であった症例も描出可能となってくるのではないかと考えている.CTでは層構造の評価が困難であることが多いが高い分解能をもつ超音波で描出することによりさらに詳細な病期診断が可能になると思われる.最近では第3世代の造影剤を用い詳細な血行動態を把握することにより客観性の高いデータが出せるようになると考えているが,依然保険適応ではなく今後の課題である.
私が注目しているのは,右下腹部痛で虫垂炎ではなかった例である.前記の検討の結果で虫垂炎以外の243例中最も多かったのは感染性腸炎の109例であった.その中でも虫垂炎と鑑別が必要な疾患の一つがエルシニア腸炎である.エルシニアの分離培養は難しい場合がありその確定診断は困難な場合もあるが,腸炎の特徴的所見を指摘することに加え正常虫垂を描出し虫垂炎を否定することが重要と考えている.
被爆大国日本といわれて久しい昨今,超音波検査で急性虫垂炎やその他の回盲部疾患を診断することが出来れば無駄な被爆を避けることが出来ると考える.