Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
シンポジウム 消化器3消化器領域における3次元超音波診断の現状と展望

(S305)

胆膵疾患における造影三次元超音波検査の有用性

Utility of contrast enhanced three-dimensional ultrasonography for pancreaticobiliary disease

三輪 治生1, 沼田 和司1, 亀田 英里1, 金子 卓1, 杉森 一哉1, 田中 克明1, 前田 愼2

Haruo MIWA1, Kazushi NUMATA1, Eri KAMETA1, Takashi KANEKO1, Kazuya SUGIMORI1, Katsuaki TANAKA1, Shin MAEDA2

1横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター, 2横浜市立大学医学部附属病院消化器内科学

1Gastroenterological center, Yokohama City University Graduate School of Medicine, 2Division of Gastroenterology, Yokohama City University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景と目的】
体外式超音波検査(US)は,簡便性,低侵襲性,リアルタイム性,高い空間分解能などの長所を有しており,スクリーニングのみならず,精密検査として様々な臓器を対象に使用されている.更に,造影超音波検査および三次元超音波検査は,USの特徴を生かした診断法として,消化器領域では肝疾患診断に対して普及しているが,胆膵疾患における報告は少ない.当院では,2007年から造影三次元超音波検査(CE 3D US)を胆膵疾患に対して施行しており,その特徴と有用性について報告する.
【対象と方法】
2007年1月から2013年10月まで,当院でCE 3D USを施行した膵充実性腫瘤142例(膵管癌107例,神経内分泌腫瘍16例,腫瘤形成性膵炎17例,転移性膵腫瘍2例),胆嚢疾患39例(胆嚢癌16例,非腫瘍性ポリープ9例,慢性胆嚢炎6例,黄色肉芽腫性胆嚢炎1例,胆泥7例)について後方視的に検討した.超音波装置は,GE Healthcare社製LOGIQ 7,超音波プローブは4D3CLを使用した.造影モードは,背景のB-modeによる影響を軽減し,微細な血管像を検出可能な,高音圧用モード(Contrast harmonic angio mode; MI値0.6-0.8)を使用した.造影剤は,全例でソナゾイド(0.2ml/body)を使用し,投与90秒後までをearly phase,90-180秒後をlate phaseとして,数回に渡って自動スキャンによりVolume dataを取得した.三次元画像の再構築法として,Volume dataを直行3断面から観察し,CTやMRIの様に並行する多断面に分割したTomographic ultrasound imaging(TUI)を作成した.また,造影によって得られた血流情報を,様々な条件により重ね合わせて血管造影に類似した画像(Sonographic angiogram)を作成した.なお,ソナゾイドは胆膵疾患に対して保険適応が得られていないため,当院倫理審査委員会の承認のもと,患者の同意を得て検査を施行した.
【膵臓】
膵充実性腫瘤に対するCE 3D USでは,スキャン範囲を幅広く設定することにより,病変と膵実質を同時相に比較でき,客観的な血流の評価が可能であった.膵実質との比較により,血流の程度をhypervascular,isovascular, hypovascularに分類した.膵管癌では,late phaseで94%がhypovascularであり,膵実質よりも早く血流が低下する傾向にあった.神経内分泌腫瘍や腫瘤形成性膵炎では,他の腫瘍との鑑別に有用な所見であった.また,神経内分泌腫瘍では,拡張した不整な腫瘍血管を認め,腫瘤形成性膵炎との鑑別に有用であった.これらの所見をもとにした膵管癌の診断能は,感度94%,特異度95%,正診率93%であった.
【胆嚢】
CE 3D USによる胆嚢疾患の撮像では,胆嚢全体のVolume dataを多断面に再構築することにより,病変の付着部や胆泥に隠れた腫瘍などの詳細な情報を得ることができた.隆起性病変28例のうち,胆嚢癌12例および非腫瘍性ポリープ9例では,全例で血流を認め,胆泥との鑑別が容易であった.造影後の形状が広基性の病変10例は,全例が胆嚢癌であった.一方で,有茎性病変11例は9例(82%)が非腫瘍性ポリープであり,茎部を走行する細い血管が描出できた.2例(18%)は胆嚢癌であったが,これらの病変では非腫瘍性ポリープと比較して太い血管を認め,有茎性病変の鑑別に有用である可能性が示唆された.胆嚢璧肥厚11例では,慢性胆嚢炎では点状の均一な血流を認め,胆嚢癌では屈曲蛇行を伴う不均一な血管が描出された.
【結語】
胆膵疾患におけるCE 3D USでは様々な特徴的画像を描出でき,鑑別診断に有用である.今後,撮像条件や再構築法の更なる検討による診断能の向上が期待される.