Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
シンポジウム 消化器3消化器領域における3次元超音波診断の現状と展望

(S304)

肝腫瘍の造影三次元超音波

Contrast-enhanced three dimensional sonography of hepatic lesion

沼田 和司1, 三輪 治生1, 石井 寛裕1, 近藤 正晃1, 福田 裕之1, 田中 克明1, 前田 愼2

Kazushi NUMATA1, Haruo MIWA1, Tomonori ISHII1, Masaaki KONDO1, Hiroyuki FUKUDA1, Katsuaki TANAKA1, Shin MAEDA2

1横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター, 2横浜市立大学大学院医学研究科消化器内科学

1Gastroenterological Center, Yokohama City University Medical Center, 2Department of Gastroenterology, Yokohama City University Graduate School of Medicine

キーワード :

【いままでの報告】
自動スキャンでの三次元(3D)超音波プローブにより,3D撮影が容易になり,術者による画像取得の差が少なくなった(Luo W, Numata K, et al. Eur J Radiol 2009;72:425-31).短時間の息止めでvolume dataを取得し,様々な再構築がその場で可能となった.Sonazoidと3D超音波プローブを組み合わせた造影3D超音波(高音圧条件と高音圧造影モードの組み合わせ)で肝腫瘍のvolume dataを取得し,様々な条件で再構築を試みた.その結果,超音波にもかかわらずCTやMRIのように等間隔に並べた画像(Tomographic Ultrasound Image;以下TUI)の作成や,血管造影の様な画像(Sonographic Angiography;以下Sono-angiography)の作成が可能となり,肝腫瘍診断(Luo W, Numata K, et al. AJR Am J Roentgenol 2009; 192:165-173 Radiology 2009; 251:287-295. World J Gastroenterol 2010; 16:2109-2119 Numata K, et al. Eur J Radiol. 2014;83:95-102)やラジオ波治療効果判定(Luo W, Numata K, et al. Eur J Radiol 2010;75:91-7)に有用である.
【撮像条件】
Sonazoidは低音圧で撮影を推奨されているが,低音圧であるがために,太い脈管以外の細い脈管にも造影剤が流入し,腫瘍とその周囲も濃染し,腫瘍のみが濃染する時間は短い.そのため造影3D超音波の最適な撮影タイミングは限定される.高音圧造影モードかつ高音圧条件で撮影すれば,一部の泡が破壊されるので,主に太い脈管に造影剤が流入し,低音圧撮影時より長時間,腫瘍のみの濃染を観察できる.さらに高音圧用の造影ソフトのほうが低音圧用造影ソフトにくらべはるかに造影剤に対する感度がよいため推奨された造影剤の量よりごく少量(約4分の1)の量を投与している.
【再構築】
手動によるvolume data取得だと正確な再構築は無理であるが,自動撮影は必須である.Sono-angiographyの再構築方法1)表面の輝度値が元の2Dスキャンの輝度値と同じsurface valueを選択.2)腫瘍濃染をみる場合は最大輝度値,腫瘍の不染域をみる場合は平均輝度を選択.3)さらに1)2)を組み合わせ調整することで目的に合わせた画像再度構築が可能.4)作成した三次元画像を回転させ,腫瘍血管と腫瘍濃染を評価し,同時に腫瘍と周囲の脈管との関係を観察した.回転角度は自由に変更可能である.TUIは直交三断面画像(前後,左右,上下方向)を作成し,腫瘍(腫瘍血管,腫瘍濃染)とその周囲の脈管との関係を観察.Sonoangiographyと直交三断面画像を一枚の静止画像で描出する画像も作成し観察した.動脈相,門脈相,後血管相のそれぞれの時相での造影パターンを組み合わせて,肝細胞癌(早期,進行),限局性結節性過形成(Focal nodular hyperplasia),転移性肝癌,血管腫,再生結節の鑑別診断に有用であり,今回報告する.
【今後の方向性】
電子スキャンはvolume dataの取得が非常に速く,上下方向のC planeの画像もかなり鮮明である.今後は電子スキャンでのSonazoid造影3D超音波画像取得のための最適条件の検索が必要と思われる.さらには造影CTもしくはMRIと超音波との融合画像が普及しているが,造影CTもしくはMRIと三次元造影超音波との融合画像が可能になれば特にラジオ波治療効果判定が容易になると思われる.
【結論】
高音圧条件かつ少量の造影剤で撮影した3D超音波画像によるSono-angiographyやTomographic ultrasound imageは腫瘍血管や腫瘍濃染を様々な方向から観察が可能であり,肝腫瘍診断やラジオ波治療効果判定に有用である.