英文誌(2004-)
特別企画 消化器
シンポジウム 消化器3消化器領域における3次元超音波診断の現状と展望
(S304)
肝癌における造影3D超音波の有用性
Usefulness of contrast-enhanced 3D ultrasonography for hepatocellular carcinoma
麻生 和信, 岡田 充巧, 玉木 陽穂, 須藤 隆次, 太田 雄, 羽田 勝計
Kazunobu ASO, Mituyoshi OKADA, Yosui TAMAKI, Ryuji SUDO, Yu OTA, Masakazu HANEDA
旭川医科大学内科学講座病態代謝内科学分野
Division of Metabolism and Biosystemic Science, Department of Medicine, Asahikawa Medical University
キーワード :
【目的】
造影3次元超音波(造影3D)はプローブの性能向上や画像処理の高速化などにより,肝臓では精密画像診断としての臨床応用が進められている.今回我々は肝癌の腫瘍血管構築および腫瘍形態診断における造影3Dの有用性について検討したので報告する.
【対象】
2013年10月31日までに造影2次元超音波(造影2D)と造影3Dを同時期(±1ヶ月以内)に行えた進行肝細胞癌46結節を対象とした.平均腫瘍径は28mm(8〜76mm),体表から腫瘍深部までの平均距離は7.3cm(1.9〜12.2cm)であった.
【方法】
使用装置は東芝社製Aplio 500.1.造影3D: 3D Mechanical probeを使用し,Sonazoid 0.2ml/bodyをボーラス投与後,Differential Contrast Harmonic Imaging(D-CHI)5.0MHzのHigh MIモード(MI値0.73-0.80)にて撮像した.3D volume dataの取得は血管相,後血管相ともにauto sweep scanによって行った.2.造影2D:通常のconvex probeを使用し,Sonazoid 0.015mL/kgを投与後,D-CHI 5.0MHzのLow MIモード(MI値0.20-0.25)にて撮像した.3.3D画像再構成:時相毎にUS tomography(直交三断面の多断面連続表示),multi planar reconstruction; MPR(直交三断面の多断面分割表示),およびmaximum intensity projection; MIP(腫瘍血管像)を作成した.4.画像評価:造影3Dの血流評価はOhtoらの報告1)に準じて行った.今回の研究では造影3Dと造影2Dを時相毎に対比して検討した.
【結果】
1.腫瘍血管構築:血管相では造影2Dの93.5%(43/46)に腫瘍血管と腫瘍濃染が揃って検出された.一方,造影3DのMIP像では95.7%(44/46)に流入動脈に連続して腫瘍内に網目状の腫瘍血管(network pattern)を認め,さらに軸回転や断面移動を加えて観察することで,腫瘍血管の全体像を立体的に評価することが可能であった.尚,MIP像の作成時間は患者条件や術者の習熟度にもよるが概ね3分前後であり,従来よりも大幅に簡便化された.2.腫瘍形態診断:後血管相では造影2Dの80.4%(37/46),造影3Dの90.0%(40/46)に欠損像が認められた.欠損像の境界部分に着目した結果,造影2Dでは境界不鮮明が94.6%(35/37)と大部分を占めたのに対し,造影3Dでは52.5%(21/40)と半数以上が境界鮮明を呈しており,造影2Dに比べ有意にコントラストが良好であった(P=0.0008).加えて造影3DのUS Tomographyは直交3断面を最小0.1mm間隔で連続的に評価可能なことから,腫瘍の輪郭評価に大変有用と考えられた.
【結語】
造影3Dは肝癌の腫瘍血管構築および腫瘍形態を立体的かつ正確に評価することが可能であり,肝癌の臨床応用面では精密形態診断法としての発展が期待される.
【参考文献】
1)Ohto M et al: Vascular Flow Patterns of Hepatic Tumors in Contrast-Enhanced 3-Dimensional Fusion Ultrasonography Using Plane Shift and Opacity Control Modes.: J Ultrasound Med 24:49-57,2005.