Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
シンポジウム 消化器3消化器領域における3次元超音波診断の現状と展望

(S303)

消化器領域における3次元超音波検査−Fly Thru−の検討

Effectiveness of Fly Thru(three-dimensional ultrasound software)in gastrointestinal field

森 秀明1, 西川 かおり1, 本田 普久1, 塚田 幾太郎1, 尾股 佑1, 關 里和1, 峯 佳毅1, 小榑 二世1, 高橋 信一1, 岸野 智則2, 贄田 真由美3

Hideaki MORI1, Kaori NISHIKAWA1, Yukihisa HONDA1, Ikutarou TSUKADA1, Yuu OMATA1, Satowa SEKI1, Yoshitake MINE1, Kazutoki KOGURE1, Shin-ichi TAKAHASHI1, Tomonori KISHINO2, Mayumi NIEDA3

1杏林大学医学部第三内科, 2杏林大学医学部臨床検査医学, 3東芝メディカルシステムズ株式会社西東京支店

1The Third Department of Internal Medicine, Kyorin University School of Medicine, 2Department of Laboratory, Kyorin University School of Medicine, 3Nishitokyo, Toshiba Medical Systems Co.,Ltd.

キーワード :

【はじめに】
3次元超音波画像は1回にスキャンして得られたvolume dataから抽出した情報を用いて,立体的な画像を得る手法である.近年,超音波診断装置の進歩により,短時間で3次元超音波画像を得ることが可能になってきた.今回,管腔臓器の表示に有用な3次元超音波検査の手法であるFly Thruの有用性と問題点につき,検討した.
【使用装置と方法】
使用装置と探触子は東芝メディカルシステムズ社製Aplio500で,探触子は4Dプローブ(PVT-375MVコンベックス型メカニカルスキャン方式およびPVT-675MVコンベックス型メカニカルスキャン方式)を用いて,取り込んだボリュームデータをMulti Planar reconstruction(MPR)およびFly Thruの表示法で観察した.対象は胆嚢,消化管,膀胱,脈管などの管腔臓器である.
【結果】
MPRは同時に直交する3断面を表示する方法で,A断面は通常の走査面,B断面はプローブの素子面の中心を交わる直交断面,C断面はプローブの素子面に対して平行な断面であり,特にC断面は通常の検査では観察することができない断層像を得ることができる.
Fly Thruはシングルスイープで得られたボリュームデータを用いて管腔内の内側からみた画像を表示する機能で,管腔内を任意の方向に視点を移動させながら観察することができる.Fly ThruはMPR画像と併せて表示することができるため,現在,管腔臓器のどの部分の内腔を観察しているかが理解できる.臨床的には肝静脈や門脈などの分岐の形態の観察や,胆嚢内の隆起性病変や結石の観察,拡張胆管や膵管の観察,消化管の内腔の観察などに有用であった.また管腔臓器以外では,腹水貯留時には慢性肝疾患の肝表面の性状変化を捉えることも可能である.
一方,Fly Thruの問題点としては,2次元画像では問題にならないような胆泥や消化管内のガスや残渣,多重反射・サイドローブなどのアーチファクトでも3次元画像にすると画像を劣化させる原因となること,病変の大きさの計測ができないこと,画像を作成できる範囲が限られており,シングルスイープで得られたボリュームデータに入りきらないような大きな臓器では,描出範囲を超える部位は画像を構築できないため空洞になること,カラードプラなどの血流情報を表示できないこと,胆嚢では結石とポリープの鑑別が困難な例があること,消化管では内腔が虚脱しているとよい画像が得られないことなどが上げられる.またFly Thruではスムージングの程度によりフィルタを0〜3に設定することができ,0はフィルタのかかっていない状態で,3がもっとも強くスムージングをかけた状態である.default(超音波診断装置の出荷時の状態)では2に設定されているが,フィルタの状態を下げるに従って内腔面の凹凸が強調され,逆にフィルタを高く設定すると内腔面は平滑になる.Fly Thruではこのようにスムージングのかけ方により画像が大きく変化するため,最適な画像を得るためどのような設定条件にすればよいかが課題としてあげられる.
【考察】
3次元超音波検査の一手法であるFly Thruは2次元画像では把握が困難な管腔臓器の病変の表面構造を立体的に描出することができること,また管腔内を任意の方向に視点を移動させながら観察することができるため有用な検査法と考えられた.一方,アーチファクトなどによる影響が大きく,2次元画像で気にならないアーチファクトでも,3次元画像ではより画像が劣化するため,良好な撮像条件で検査を行う必要がある.またフィルタなどの設定条件に関しても,今後検討を重ねていく必要があると思われた.