Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
シンポジウム 消化器2腹部スクリーニング検査におけるカテゴリー分類の問題点

(S300)

腹部超音波スクリーニングにおけるカテゴリー分類の位置づけ

Evaluating Value of Categorized Criteria for Abdominal Ultrasound Screening

水間 美宏, 福島 豊実

Yoshihiro MIZUMA, Toyomi FUKUSHIMA

神戸アドベンチスト病院消化器内科

Department of Gastroenterology, Kobe Adventist Hospital

キーワード :

【目的】
我々は,健診での腹部超音波検査の判定と事後指導に,日本人間ドック学会の「腹部超音波検査所見の判定及び事後指導区分」を用いてきた.一方,日本消化器がん検診学会から,2011年9月に「腹部超音波がん検診判定基準」においてカテゴリー分類が発表されてからは,腹部超音波検査の判定と事後指導に両者を併用してきた.今回,健診での腹部超音波検査のカテゴリー分類と事後指導のあり方,カテゴリー分類の位置づけについて提案する.
【対象】
対象は,2011年11月1日から2013年2月28日までの間に,当院で腹部超音波検査を初めて実施した820例である.その内訳は男318名,女502名であり,平均年齢は57歳であった.
【方法】
腹部超音波検査の検者は主に臨床検査技師であり,検者が「腹部超音波がん検診判定基準」の所見に基づいてカテゴリー分類を行なった.次にカテゴリー分類を見た上で,医師が診断し,「腹部超音波検査所見の判定及び事後指導区分」に基づいて指導を行なった.そして精密検査や経過観察によって得られた診断結果と,事後指導区分,カテゴリーとの関係を調べた.
【結果】
カテゴリー5から診断されたがんは,肝細胞がん2例,転移性肝がん2例,胆管がん2例,膵がん2例であった.カテゴリー4から診断されたがんは,転移性肝がん2例,がんのリンパ節転移4例,悪性リンパ腫1例であった.カテゴリー3から診断されたがんは,転移性肝がん1例,胆管がん1例,胆嚢がん2例であった.また,カテゴリー3から診断された良性疾患は,肝血管腫17例,胆嚢ポリープ7例,膵嚢胞4例,水腎症9例,脾腫16例などであった.カテゴリー2,カテゴリー1,カテゴリー0から診断されたがんはなかった.
【結論】
(1)「腹部超音波がん検診判定基準」は,がんだけでなく,腹部大動脈瘤や脂肪肝などを発見するための所見も網羅されているので,健診での腹部超音波検査の判定に「腹部超音波がん検診判定基準」を用いることに問題はない.
(2)「腹部超音波がん検診判定基準」では,具体的な所見とそれに対応する形でカテゴリーが列記されており,診断名は記されていないので,技師が,所見によってカテゴリー分類することが可能である.
(3)充実性病変をカテゴリー3とするか,さらに詳細な所見をとらえてカテゴリー4,5に上げるか,逆にカテゴリー2に下げるか,検者には判定に必要な技術と知識が求められている.
(4)腹部超音波検査では,治療や精密検査を要する良性疾患も多く発見されることから,カテゴリーを受診者に伝えるだけでは事後指導ができない.そこで「腹部超音波がん検診判定基準」の所見から予想される診断名と,それに対応した事後指導区分を定めて,受診者に伝える必要がある.
(5)カテゴリー4,5の所見については,それぞれに,腫瘍の疑い,腫瘍といった診断名をつけて,事後指導区分をD:要精密検査または要治療とするべきである.
(6)カテゴリー3の所見をすべてD:要精密検査とすると要精検率が高くなり,がん検診としての特異度が低下してしまうので,所見ごとに適切な事後指導区分を決めることが必要である.
(7)カテゴリー2すなわち良性の所見でも,腹部大動脈瘤や胆管結石のように,事後指導区分をD:要精密検査または要治療とすべき良性疾患もある.
(8)今後の腹部超音波検診では,検者(主に技師)が,カテゴリー分類を行ない,医師は技師のカテゴリー分類を見て,診断名をつけ,事後指導区分を決定することが,検診の精度向上のために必要である.