Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
シンポジウム 消化器2腹部スクリーニング検査におけるカテゴリー分類の問題点

(S299)

当施設における膵臓のカテゴリー分類と事後判定区分の現状

Current status of new criterion of the pancreas abdominal cancer screening using ultrasound in our hospital

中河原 浩史, 小川 眞広, 平山 みどり, 高安 賢太郎, 三浦 隆生, 塩澤 克彦, 阿部 真久, 松本 直樹, 森山 光彦

Hiroshi NAKAGAWARA, Masahiro OGAWA, Midori HIRAYAMA, Kentarou TAKAYASU, Takao MIURA, Katsuhiko SHIOZAWA, Masahisa ABE, Naoki MATSUMOTO, Mitsuhiko MORIYAMA

駿河台日本大学病院内科

Internal Medicine, Surugadai Nihon University Hospital

キーワード :

【目的】
腹部超音波検診はがんの早期発見に有用であり,簡便で非侵襲的なことから広く普及している.しかし,施設間で判定基準に差がみられていることが問題であったため,2011年に腹部超音波がん検診基準が日本消化器がん検診学会から発行された.さらに2013年10月に事後判定区分が追加された腹部超音波検診判定マニュアル(案)が示され,これにより施設間の共通化が進められ,今後の精度管理,評価を行われることが期待される.超音波検査において膵臓は消化管ガスや脂肪の影響を受けやすく観察が難しい臓器である.一方で膵臓がんは発見時には進行していることが多く予後不良であるため,早期発見が求められている.そこで今回我々は,腹部超音波検診判定マニュアル(案)の有用性を明らかにする目的で,当施設で行った腹部超音波検査の膵臓の結果を用いて,最終診断との比較検討を行った.
【方法】
対象は2012年11月〜2013年10月までの1年間に当施設で腹部超音波検査を行った2894症例とした.対象症例の保存画像を超音波専門医が再読影し,カテゴリー分類及び事後判定を行った.カテゴリー2〜5と判定された172症例に対しては,追跡調査を行い最終診断との比較検討も行った.
【結果】
カテゴリー0:5症例,カテゴリー1:2717症例,カテゴリー2:8症例,カテゴリー3:119症例,カテゴリー4:35症例,カテゴリー5:10症例であった.要治療である判定区分D1は9症例あり全て膵癌であった.要精検である判定区分D2は97症例(3.4%)あり,最終診断は膵癌4例,膵管内乳頭粘液性腺癌1症例,膵管内乳頭粘液性腫瘍34症例,膵粘液性嚢胞腫瘍1症例,慢性膵炎14例,自己免疫性膵炎2例,膵神経内分泌腫瘍2例,膵嚢胞2例,副脾1例,腹腔内リンパ節1例などが含まれており,17症例では異常はみられなかった.膵癌2症例と膵粘液性嚢胞腫瘍1症例は切除されていた.また,3〜4mmの主膵管拡張でカテゴリー3,判定区分D2であった12症例では精査は行われていなかった.
【結論】
腹部超音波検診判定マニュアル(案)の膵臓ではカテゴリー2〜4までの広い所見でD2判定となるが,要精検率は3.4%と高率ではなかった.また,悪性腫瘍はカテゴリー4,5に分類され,判定区分D1,D2であったことから悪性腫瘍のカテゴリー及び事後判定に問題はないと考えられた.膵臓の超音波検査では描出不良が問題となるが,当施設ではカテゴリー0は5症例のみであり,これは積極的に体位変換や飲水法を用いていること,超音波学会専門医がダブルチェックを行っていることが要因と考えられた.しかし,CTやMRIによる精検で超音波では指摘できなかった膵嚢胞が7症例みられており,描出困難部位が存在することを認識することは必要であると考えられた.事後指導には逐年経過や併存疾患も加味されるが,悪性度の高い膵疾患や超音波検査の死角を考慮すると膵臓のD2判定では,積極的な精検も必要と思われた.