Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
シンポジウム 消化器1見逃してはいけない消化器疾患の超音波所見

(S297)

肝限局性結節性過形成における「腫瘤の中心部から辺縁に広がる造影効果」について

Contrast-enhanced ultrasonographic finding in the vascular phase to identify hepatic focal nodular hyperplasia -Centrifugal filling pattern-

水口 安則

Yasunori MIZUGUCHI

国立がん研究センター中央病院放射線診断科

Diagnostic Radiology, National Cancer Center Hospital

キーワード :

【目的】
肝限局性結節性過形成(focal nodularhyperplasia,以下FNH)は,肝細胞癌,fibrolamellarhepatocellular carcinoma,肝腺腫,肝血管筋脂肪腫などとの鑑別診断がしばしば問題となるため,FNHの的確な質的診断は臨床上重要な位置を占める.今回,FNHで認める各種超音波所見のうち,造影超音波血管相において「見逃し」てはいけない重要な所見のひとつである「腫瘤の中心部から辺縁に広がる造影効果(centrifugalfilling pattern)」について検討したので報告する.これは当学会の「肝腫瘤の超音波診断基準」(2012年)の造影超音波による質的診断の中に,血管相における特徴的所見としてspoke-wheel patternと共に「中央から外側に向かって極めて短時間に肝実質より濃染」と記載されている.
【対象と方法】
対象は,2007年3月-2014年2月の期間中ソナゾイドを用いた造影超音波を施行した,44症例,44病変である.病変が複数存在する症例では,最大径を示す病変のみを対象とした.1病変は切除,5病変は生検にて,その他は各種画像診断にて診断した.内訳は,男性 23症例,女性 21症例,年齢 18-73歳(平均45.9歳),腫瘤径 9-82mm(平均28.0mm大)である.造影方法は,規程の濃度に調整したソナゾイド0.5ml/bodyを20Gまたは18Gサーフロー留置針を用いて肘静脈よりbolus,または急速点滴法にて静注した.MI値0.15-0.20によるpulse subtraction CHIを使用して造影検査を施行,血管相(静注後0-40秒前後まで)と後血管相(静注後10分前後)における造影所見を観察し,静止画または動画に記録した.使用した超音波診断装置は,東芝メディカルシステムズ社製AplioXV/XG/500である.
【結果】
血管相において,spoke-wheel patternを,44病変中22病変(50.0%)に検出した.一方,「腫瘤の中心部から辺縁に広がる造影効果」は,32/44病変(72.7%)に認めた.
その後は,全病変がすみやかに腫瘤全体の良好な造影効果に移行した(44/44病変,100%).ちなみに,後血管相では全病変にて腫瘤全体の造影効果の持続を認めた.そのうち腫瘤の造影輝度が周囲肝実質より高輝度を示した病変は,25/42病変(59.5%,2病変は未施行または撮像不良のため除外した),central scar imageを描出できた病変は,21/42病変(50.0%)であった.
【考察】
ソナゾイドを用いた造影超音波の血管相では,ほぼ一瞬のうちに造影が完結するため「腫瘤の中心部から辺縁に広がる造影効果」をしばしば「見逃し」てしまう可能性がある.本所見はspoke-wheel patternより高率に検出することができるため,FNHの確診度を高める重要な所見と考える.無論,FNHの診断は前述の後血管相所見を組み合わせて総合的に行う必要があるのはいうまでもない.なお,「腫瘤の中心部から辺縁に広がる造影効果」は,動画再生または複数の時系列静止画を撮像して評価する必要がある.これを補う映像手法として,parametric MFI(Micro Flow Imaging)が有効である.本法は,造影剤の到達時間を断層像上にカラーコード化して表現する手法であり,造影剤が流入する時間差を1枚の画像で表現することが可能である.発表の際にはparametric MFIを含めて報告したい.