Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 基礎
シンポジウム 基礎1超音波定量診断技術の最前線

(S271)

ずり波伝搬による組織弾性計測

Tissue elasticity measuremnent by shear wave propagation

山越 芳樹

Yoshiki YAMAKOSHI

群馬大学大学院理工学府

Faculty of Science and Technology, Gunma University

キーワード :

【はじめに】
ずり弾性波は,超音波に代表される体積弾性波と並び媒質を伝わる振動波であるが,ずり弾性波の伝搬を特徴づけるずり粘弾性は,手で触った時に感じられる硬さや張り等と関係が深いので,各社がずり弾性波を使う超音波映像装置を開発している.しかし,「測定値と触った時の感触が合わない場合がある」,「測定値が予想以上にばらつく」など,疑問が呈されることがある.この一つの理由として,ずり弾性波の波動としての性質が十分に理解されないまま使われていることが挙げられる.ずり弾性波は,組織の硬さの違いにより数倍以上も伝搬速度が変わるので,これは組織特性化という点で長所になるが,逆にずり弾性率が異なる境界で大きな屈折や反射を生むことになり,伝搬方向を正しく把握して伝搬速度の測定を行わないと測定値がばらつくことになる.またずり粘性の影響で一般に伝搬速度には大きな周波数依存性が現れるが,これは周波数依存性からずり粘性が評価できるという利点を生むものの,伝搬速度計測では周波数を明示しなければならないという制約が生じる.さらにずり弾性波の減衰には,ずり粘性によるものと応力歪関係のヒステリシスによるものの2種類があり,これが一部混同されて使われていることにも注意する必要がある.
【概要】
本稿では,超音波によるずり粘弾性の測定や映像化に関する課題について触れるとともに,我々の研究室で検討してきた2つのずり弾性波の映像法について示す.第一の方法は,応力歪関係のヒステリシスに着目した映像法であり,ヒステリシスをずり弾性波のわずかな位相歪として捉えることで映像を得ようとする方法である.第二の方法は,汎用のカラーフロー映像法をずり弾性波の波面再生に使う方法であり,組織を伝わるずり弾性波の伝搬を2次元の動画像で簡便に観察でき,これから伝搬方向を確認しながら伝搬速度計測が行える定量性のある方法である.後者の方法は,カラーフロー映像で使われる流速推定アルゴリズムが,ずり弾性波の周波数と超音波パルス繰り返し周波数が特定関係(周波数条件)を満たすときに,ずり弾性波の波面がカラーフロー映像上に最大流速領域として再生されることを利用した方法である.詳細については本集会の別講演で示すが,この方法により肝臓内を伝わるずり弾性波の波面をin vivoで再現した例を図に示す.