Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 基礎
シンポジウム 基礎1超音波定量診断技術の最前線

(S271)

高速イメージングによる定量計測

Quantitative Measurement Using High Frame Rate Ultrasound

長谷川 英之1, 2, 金井 浩1, 2

Hideyuki HASEGAWA1, 2, Hiroshi KANAI1, 2

1東北大学大学院医工学研究科, 2東北大学大学院工学研究科

1Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 2Graduate School of Engineering, Tohoku University

キーワード :

高速超音波イメージングの本格的な応用は2002年のTanterらのずり波伝搬計測[1]に端を発すると思われる.リニアプローブを用いて平面波を送信し,プローブ両端に狭い受信開口を配置して空間内の同一点に異なる2方向から受信ビームを形成することにより,パルス的な音響放射力により組織内に発生したずり波による変位分布をイメージングしている.これにより対象内の変位分布を数千Hzという高フレームレートでイメージングしている.当該論文ではBモード断層像の計測には重きを置いていないが,おそらく受信開口が狭く空間分解能の劣化が著しいためだと思われる.著者らは,広い受信開口を用いることで,空間分解能はほとんど劣化させず3 kHz以上のフレームレートでBモード断層像を撮像可能であることを示した[2].その後,異なる角度の平面波を重ね合わせることにより,若干フレームレートは落ちるものの従来と遜色ないBモード断層像を得ることができる手法が提案されるなど[3],高速な超音波断層像計測が広く使用されるようになってきている.
高速超音波イメージングによる定量計測の例としてまず挙げるべきは,上述した音響放射圧により発生したずり波の伝搬速度の計測である[4].生体組織の密度を仮定すれば,ずり波伝搬速度からずり弾性率を推定可能であり,組織弾性イメージング法として有用な手法である.著者らは,高速超音波イメージングを,循環器系の動態計測に適用している.ビーム偏向などを組み合わせた高速イメージングにより動脈壁のひずみや血流を可視化できることを示す[2]とともに,脈波伝搬速度計測についても高時間分解能であることから進行波と反射波それぞれについて伝搬速度を推定することができるなど[5],血管系の定量計測の可能性を示している.また,著者らは高速イメージング法を心臓にも拡張している[6,7].心臓の計測では肋骨の間から超音波を入射するため広い開口が使用できないことから,仮想点音源から球面状に拡散する送信波を用いて,心臓の高速イメージングを可能としている.本手法は,心臓の血流動態を高速にイメージングできる[8]ほか,心筋のトラッキング[9]および心筋の興奮伝播の計測へも応用できる[10,11]など,心機能の定量計測にも威力を発揮すると思われる.最近では,HIFU(high intensity focused ultrasound)のモニタに高速超音波イメージングが使用される[12]など,その用途は今後ますます広がっていくものと考えられる.
【参考文献】
[1]Tanter, et al., IEEE Trans UFFC, 2002.
[2]Hasegawa and Kanai, IEEE Trans UFFC, 2008.
[3]Montaldo, et al., IEEE Trans UFFC.
[4]Bercoff, et al., IEEE Trans UFFC, 2004.
[5]Hasegawa, et al., J Med Ultrasonics, 2013.
[6]Hasegawa and Kanai, J Med Ultrasonics, 2011.
[7]Hasegawa and Kanai, IEEE Trans UFFC, 2012.
[8]Takahashi, et al., 2013 Joint UFFC EFTF PFM Symp., 2013.
[9]Honjo, et al., JJAP, 2010.
[10]Kanai, IEEE Trans UFFC, 2005.
[11]Provost, et al., Phys Med Biol, 2011.
[12]梅村,第74回応用物理学会秋季学術講演会,2013.