Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
パネルディスカッション 領域横断2超音波検査教育体制の創造

(S265)

乳腺領域における超音波検査教育体制の創造

Creation of the sonography education system in the breast domain

白井 秀明

Hideaki SHIRAI

札幌ことに乳腺クリニック乳腺科

Breast Oncology Department, Sapporo Kotoni Breast Clinc

キーワード :

乳腺超音波検査に関する教育を考えた場合,もっとも急務として取り組まなければならないことは,今後予測される乳がん検診における超音波検査併用に向けた従事者の人材育成である.我が国では,2007年から世界初の超音波検査による40歳代に対する乳がん検診の無作為比較試験(J-STAT)が行われており,その有用性が示された場合,併用検診に従事する人数は相当必要なることが予測されることより,効率的な教育プログラムの開発やシステムの構築が必要となると考える.そのために必要なものは何かを考えてみる.これまで超音波検査による乳がん検診の従事者育成は,主に日本乳腺甲状腺超音波診断会議(現日本乳腺甲状腺超音波医学会)の教育委員会が中心となって,2003年より乳房超音波講習会を開催し,一定の成果を上げてきた.ただ,その必要性は日増しに高まり,ひとつの学会の規模で維持することには,限界がきていた.そこで昨年設立された日本乳がん検診精度管理中央機構(日本乳癌検診学会を中心に検診関連6学会によって設立されたMMG検診精度管理中央委員会に超音波検査関連の3学会が新たに加わって作られたNPO法人)に,その実務を移行し,これまで以上の規模と継続性を持った教育の普及を目指すこととなった.
そこで今後求められることは,まず検診や精査機関におけるそれぞれ目的に応じた教育である.たとえば検診現場の従事者に求められるのは“要精査の効率的な拾い上げ”であり,それにはカテゴリー判定の周知や精度管理の徹底が必要なのである.一方精密検査機関の従事者の場合は,良悪の鑑別や組織型推定など,より診断に近い内容が求められることより,検診とは異なる内容のカリキュラムが必要になる.また個人の実力(経験やスキルの違い)の差による段階的な教育,つまり乳腺超音波検査の経験はないが超音波検査はある方達ばかりではなく,これまで全く超音波検査に携わったことがない方々に対しても積極的に教育していくことが求められることが予測される.このような中,全ての方々に共通して必要となるのが,ハンズオンであろう.超音波検査はそもそもこれまでのような座学のみの勉強では検査技術の向上はほぼ望めない.但し,実際は他の臓器ように比較的手軽に被験者を募ってハンズオンを行うことはできないため,これまではそう多く企画される事はなかった.このような中,乳房型ファントムが国内メーカーより商品化され,今後はこの乳房型ファントムによるハンズオンが新たな教育の柱の一つになるものと考える.
またもう一つ考えなければならないことは,乳腺超音波検査が性差医療に関わる分野であることより,その事柄に十分配慮した教育が求められるという事である.但し,そうは言っても私にはその従事者が必ずしも女性限定でなければならないという考え方はいない.なぜなら超音波検査は確実にその技術を習得したものが行うべき検査であり,十分性差医療に配慮された教育を行っていければ,特に男女の区別を述べる必要はないものと考える.
最後に今後より質の高い教育のために取り入れていきたいと考えているのが,実際の病変(病理標本も含め)を用いた教育である.超音波検査従事者の多くは実際の病変を直接目にする機会が少ないことより,疾患に対する実感も含め,病変を見極める上での情報不足は否めない.その為,画像所見から疾患をイメージする事が出来ず,診断に苦慮する事が多く見られる.ただ,昨今の個人情報保護などの観点から実際の病変を教育に取り入れることは,難しくなってきており,実際どのように取り入れていくのかは今後の課題といえる.