Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
パネルディスカッション 領域横断2超音波検査教育体制の創造

(S263)

超音波検査教育体制について 個人,病院・地域でできること,学会がになう役割

For ultrasound education system, What can be individuals,hospitals and local educational systems do? Role of the JSUM

富田 文子1, 西上 和宏2, 尾形 裕里1, 村上 未希子1, 田上 結貴1

Ayako TOMITA1, Kazuhiro NISHIGAMI2, Yuri OGATA1, Mikiko MURAKAMI1, Yuki TANOUE1

1済生会熊本病院中央検査部, 2済生会熊本病院集中治療室

1Department of Laboratory, Saiseikaikumamoto Hospital, 2Intensive Care Unit, Saiseikaikumamoto Hospital

キーワード :

超音波教育の,ベースは本来大学で学んだ内容であるべきである.大学で使用した教科書をみると,超音波に関しても多岐にわたる症例が図入りで,詳しく記述されているものが多い.しかしながら,新人スタッフの超音波の知識技術レベルは,臨床に即さない事が多いのが現状である.
そこで,配属されてからの超音波教育の始まりは,先輩が手取り足取り教えることからとなる.同時に,新人は,数多く出版物から,先輩と相談の上,自分に合いそうな本を購入する.
当院では,新人教育に,細かく記載された新人教育(業務習得)チェックリストを用いている.また,一人の新人に一人の教育担当者を設定し,毎月,進捗状況をスタッフ全員に報告してもらい教育到達度の情報共有を行っている.また,進捗が遅れがちなスタッフの教育担当者に対し,方針の見直しをアドバイスしたり,担当者以外のスタッフがサポートしたりといった事も行っている.この,教育の基本となるのが,当院で作成した,業務マニュアルである.各種ガイドラインなどをもとに作成されており,年一回見直すこととなっている.
一方,ガイドラインの変更はなされていないが,学会や講習会でよく取り上げられる測定項目についてや,日本のガイドラインでは変更がないが,海外のガイドラインでは変更がなされているといった項目について迷うことが多い.一つでも多くの学会や講習会への参加,月刊心エコーをはじめとする専門書の抄読などを行い情報の収集に努力はしているが,過不足のない情報をもとに,よく吟味された業務マニュアルかと問われると,うつむかざるを得ない現状である.
地域での技師教育に関して,九州は超音波に対する学習熱の高い地域であり,九州各県で様々な講習会が開催されている.熊本県では,地域の主立った医師が世話人となり,年2回開催の,心臓血管エコー懇話会がある.これは,医師と技師が一緒に学ぶ会で,演題発表のほか,ハンズオン講習会や,心臓血管エコーに精通した講師をお招きした講演会などが主体となっている.また,当院が主催している,Echo cardiovascular conferenceは当院の技師が地域の技師向けに行っている勉強会で,毎回100名程度の参加がある.九州全体を対象とした勉強会も立ち上がっており,各学会が主催する講習会なども含めると,かなり充実した教育体制が整ってきているように思われる.
特に当院のような,地域支援病院として位置づけられている病院の多くは,地域の医療人の育成に寄与することが求められており,地域の超音波を学びたい技師の研修を数多く受け入れている.また,それらの研修の受け入れとは別に,当院では超音波技師育成枠という採用枠があり,地域の超音波を担う人材となるべく,超音波検査士取得を目標に育成を行っている.
超音波学会が,各種団体や学校教育,病院のまとめ役となり,誰がいつどこの病院にかかっても,ある一定レベルの超音波検査が受けられるような体制が整うことを期待すると同時に,自分自身も,今現在出来ることをやっていこうと思う.