Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断12他領域医師・技師に役立つ心エコー図

(S258)

循環器内科医のための心エコーと一般内科医のための心エコーの相違

The difference of the Echocardiography for a cardiologist and a general physician

高橋 秀一

Shuichi TAKAHASHI

社会福祉法人恩賜財団済生会中和病院医療技術部

Department of Medical Technology, Saiseikai Chuwa Hospital

キーワード :

【はじめに】
演者は昨年,総合病院:天理よろづ相談所病院(1,001床)から地域中核病院:済生会中和病院(324床)へ転勤した.本シンポジウムで私にお与えいただいた事項は,前職と現職すなわち循環器医がいる施設といない施設で,どのように医師からの検査依頼を受けとめて,どのように検査し,どのような結果を返しているかと理解し,それらにつき話題を提供させていただく.
【心エコー検査今昔】
心エコー検査は,ペンシルプローブを用いたMモード法のみの時代には医師が中心になっていた.その後,二次元断層エコー法さらにカラードプラ法をはじめとする各種ドプラ法が登場して飛躍的に発展し,検査実施者は医師と一緒に技師も,そして技師が中心になってと変遷してきた.一昔前の心エコー検査は,敷居が高い検査であるかのように思われ,上級医師に相談してから慎重にオーダーしていた時代から,電子カルテのボタンひとつで誰でもオーダーが可能となり,検査依頼の内容も,循環器疾患に特化していたものが今やスクリーニングを含めて多種多様となってきた.検査結果に関しては,アナログ記録からデジタル記録になって,レポーティングシステムとの合体によってどこでも,いつでも記録画像やレポートが見られるようになった.
【心エコー検査依頼までの経緯を検証】
前職では,循環器系疾患に特化した診療科(循環器内科,心臓血管外科,先天性心疾患センター)があり心エコー検査依頼の全体に占める割合は70%程度を占めている.内容は,「診断をつけるための検査」,「病態を把握するための検査」,「経過観察の検査」,「エコー的には,正常であることを確診するための検査」が主なものである.その中には,一般内科医や外科医などからのコンサルトに対するものも含まれる.残りの30%内で目立つのは,神経内科医からの心原性塞栓検索や高齢者の非心臓手術前検査のスクリーニングである.
現職の病院は,心臓専門医がいなく依頼は各科から出される.内容の割合は前職と変わらないが,地域連携室を通じて他院からの紹介を受けて検査を行い,レポートと報告書をもって逆紹介していることが特徴である.
【依頼医師によって返すレポートの内容は異なるか?】
前職の検査件数は,年々増加し2013年は11,463件であった.しばしばパンク寸前の予約混雑の中,緊急検査(経食道エコーを含む),本日中という期限つきの検査,「押し込み」検査あるいは「泣き落とし」検査など,予約外検査も日常茶飯事である.これらにも,手抜きすることなく対応して検査を行ってしまうのが,検査室の悲しい性ともいえる.
手抜きをしない検査とは,レポートも手抜きをしないということになる.そういう意味では,かなり質の高いレベルを維持していなければならない.これは,必ずしも,最先端の技術を駆使して高度な検査を行うという意味ではない.依頼医の求めや患者の病態に応じた検査を行い,経過観察検査では過去の検査との念入りな比較など,地味な作業を着実かつ継続的に行うということである.計測や壁運動の評価にあたり,過去の動画や計測値を見返して,レポートの継続性に配慮することは,実に根気と時間を要する作業であるが,たいへん重要と考え前職ではもちろんのこと現職でも行っている.
さて,依頼医師によって返すレポートの内容は異なるか?それは,あり得る.心エコーに造詣の深い循環器医が有所見のレポートを受け取って右往左往することはあまりないが,一般内科医や他科の医師には,有所見のレポート内に次に起こすべき行動を促すリコメンデーションを付記している.