Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断11集束超音波治療の現状と問題点

(S256)

切除不能進行膵癌に対する強力集束超音波(HIFU)療法の現状と問題点

Clinical matters of High-Intensity Focused Ultrasound (HIFU) therapy for unresectable pancreatic cancer

祖父尼 淳, 佐野 隆友, 藤田 充, 糸井 隆夫, 森安 史典

Atsushi SOFUNI, Takatomo SANO, Mitsuru FUJITA, Takao ITOI, Fuminori MORIYASU

東京医科大学消化器内科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University

キーワード :

画像診断の進歩にもかかわらず,いまだ膵癌は約60%が切除不能として発見される.切除不能膵癌の治療法として化学療法や化学放射線療法が原則的におこなわれているが,1生率は約10%と低い.そのような進行膵癌に対しては様々な手段を用いた集学的治療が必要であり,治療成績の向上および予後の改善のうえで様々な取り組みが不可欠である.その中でも放射線被曝がなく,針なども必要としない低侵襲の治療法として注目されているのが,強力集束超音波(High Intensity Focused Ultrasound; HIFU)焼灼療法である.HIFU療法は,多数の超音波発信源から腫瘍の目的部位の1点に集束させ,体外から組織の焼灼を行う治療法である.
現在,当科では切除不能膵癌患者に対しHIFU治療をおこない,その安全性を検証し,治療法を確立するための臨床試験をおこなっている.なお本試験は当院倫理委員会の承認を受け,東京医大がん研究事業団の研究助成を得ている.HIFU装置はFEP-BY02 HIFU Therapeutic System(Yuande Bio-Medical Engineering, Beijing, China)を使用している.2008年12月より切除不能膵癌に対し十分なICが得られ,全身化学療法に加えた局所療法としてHIFU治療をおこなっている.
当科でおこなった切除不能膵癌30例に対する安全性評価では,偶発症は導入初期にみられた膵仮性嚢胞2例,遅発性膵炎1例の10%の頻度で重篤なものは認めなかった.切除不能膵癌に対しFEP-BY02 HIFU Therapeutic Systemを用い安全にHIFU治療をおこなうことが可能であった.現在も切除不能膵癌に対してHIFU治療をおこない,治療法の確立と治療効果に関しての検討をおこなっている.疼痛緩和効果,抗腫瘍効果,予後に関してプロミシングな結果が得られており,予後不良な膵癌に対する集学的治療となりうる可能性を示唆している.今後,多施設共同による臨床試験の検討が望まれる.

問題点としては,消化管や胆管(胆管ステント)に対する安全性があげられる.対策として,モニター超音波の性能の向上,リアルタイムでの3D /ドプラ表示機能や温度モニター機能,治療前の3Dシュミレーション機能などの搭載が望まれており,HIFU治療機器のさらなる進歩が期待されている.また日本での機器承認や高度先進医療の承認を取得していないことも今後の課題としてあげられる.