Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断11集束超音波治療の現状と問題点

(S254)

子宮筋腫に対するMRガイド下集束超音波治療; 適応条件と治療の実際

Magnetic resonance-guided focused ultrasound surgery (MRgFUS) for uterine leiomyomas: early clinical experience

大森 真紀子1, 佐野 勝廣2, 市川 新太郎2, 掛川 貴史3, 池長 聰3, 熊谷 博司3, 正田 朋子1, 端 晶彦1, 市川 智章2, 平田 修司1

Makiko OMORI1, Katsuhiro SANO2, Shintaro ICHIKAWA2, Takashi KAKEGAWA3, Satoshi IKENAGA3, Hiroshi KUMAGAI3, Tomoko SHODA1, Akihiko HASHI1, Tomoaki ICHIKAWA2, Shuji HIRATA1

1山梨大学医学部産婦人科, 2山梨大学医学部放射線科, 3山梨大学医学部附属病院放射線部

1Department of Obstetrics and Gynecology, 2Department of Radiology, Faculty of Medicine, University of Yamanashi, 3Department of Radiology, University of Yamanashi Hospital

キーワード :

【目的】
子宮筋腫は婦人科の良性腫瘍の中で最も頻度が高く,30歳以上の女性の20〜30%に存在するといわれている.治療はすべての筋腫に必要なわけではなく,症状を有する場合に必要となる.子宮筋腫に対する治療には,手術(子宮全摘出術,筋腫核出術),子宮動脈塞栓術,ホルモン治療(偽閉経療法)があり,それぞれ長所と短所がある.子宮筋腫に対するMRガイド下集束超音波治療(MR-guided focused ultrasound surgery; MRgFUS)は,2004年に米国食品医療局(FDA; Food and Drug Administration)で承認され,低侵襲で合併症が少なく,効果の高い治療法として,海外ではすでに多くの治療例の報告がある.国内では2009年に厚生労働省の薬事承認を受け,現在,保険収載に向け検討中であり,今後導入の拡大が予想される.当院では国内の国公立病院としては初めて,子宮筋腫に対し2012年7月に治療を開始した.治療の適応条件,当院の初期経験における治療成績と問題点について検討を行った.
【方法】
当院の倫理委員会の承認のもとに,FUSに関する一定の講習,トレーニングを受けた産婦人科専門医,放射線科専門医,放射線技師,看護師が治療チームを編成し,当院におけるMRgFUSの適応基準,治療法,管理法を設定した.この適応基準に合致し,インフォームド・コンセントが得られた子宮筋腫17例(閉経前の40〜51歳)に対し,使用装置ExAblate 2000(InSightec社),MRI装置 1.5T(GE社)を用いて治療を行った.治療後6か月以上を経過した12例について,患者背景,MRI所見,焼灼率,合併症,および自覚症状(Symptoms Severity Score; SSS)と筋腫サイズの経時的変化について検討した.
【成績】
12例の治療前の全筋腫体積は265±127ml(94〜524),治療対象の筋腫体積は131±114mlで,焼灼回数は80±18回,焼灼率(nonperfused volumeの比率)は58±24%であった.合併症を認めた症例はなく,SSSは治療直前54±15ポイント,3か月後36±15(p<0.01),6か月後30±19(p<0.01)と有意に改善した.筋腫の縮小率は3か月後28±21%(p<0.01),6か月後31±26%(p<0.05)と有意であった.しかし,個々の症例で検討すると,GnRH(gonadotropin releasing hormone)アゴニスト投与を行っていた2例,筋腫が大きくT2強調画像で高信号が混在していた1例では,6か月後に筋腫の増大がみられ,子宮全摘出術を必要とした.文献による他施設の成績と比し,筋腫の縮小率,SSSいずれも低い傾向がみられた.12例目からは,仙骨に近い筋腫を治療する症例では,治療前に直腸内にゼリーを注入することにより,十分な焼灼が可能となった.
【結論】
子宮筋腫に対するMRgFUSについては,現時点では挙児希望の症例は適応外であり,腸管の位置,筋腫の位置,大きさ,性状など一定の基準に合致する必要があり,治療適応となる症例が限られる.MRgFUSによる治療成績を向上させるためには,治療前のGnRHアゴニスト投与,治療筋腫の選択,焼灼効果を上昇させるための工夫など,さらに検討が必要である.